古文は難しいと思っている子どもでも、古の日本人が何を見て何を感じたのか想像してみると、思いのほか多くの発見があると思います。
今回は小学校低学年のお子様からでも読みやすいよう、短歌(五七五七七)を集めた音読教材を作成しました。
題材としたのは、平安時代前期に編纂された『古今和歌集』。
以降の日本文学に大きな影響を与え、天皇の命を受けて編纂された初の勅撰和歌集です。
多くの勅撰和歌集の中から歌を精選した『百人一首』も、実は約四分の一が古今和歌集から選ばれたものです。
音読教材を子どもの家庭学習に役立て、平安時代の美しい言の葉の世界を感じてみてください。

選定した歌について

紀貫之は、古今和歌集の撰者四人のうちの一人であり、最も多くの歌を古今和歌集に残した平安時代を代表する歌人です。
宮中でもその名が知れ渡っていた紀貫之。彼が書いた古今和歌集の序文は、大変美しい文章として有名で、漢文ではなく平仮名で書かれた序文であることから『仮名序(かなじょ)』と言われています。
仮名序は実に美しく、この名文は是非子どもにも読んで欲しいと思い、音読教材として取り上げました。
短歌については、子どもにもわかりやすい『四季の歌』から選び、百人一首に選ばれた歌も含まれています。また小学生でも理解しやすいよう、敢えて恋歌等は除きました。
音読教材~子ども向けの工夫

子どもでも古典を音読しやすいように、次の点に留意しました。
- 歌の記載は、読みやすい書体(UD デジタル 教科書体)、フォント(22)、太字にする。
- 読みやすい位置に、改行あるいは半角スペースを入れる。
- 漢字や古文の仮名づかいには、ふりがなをふり音読しやすくする。
- 歌を理解しやすいよう、イメージ画像を1~2枚入れる。
- 全ての歌に解説を加える。
下記画像をクリックすると無料音読教材をダウンロードすることができます。
家庭学習などにご使用ください。

※無料ダウンロードする方は「ダウンロードのご利用について」をお読みください。
理解を深めるための情報
【河鹿蛙(かじかがえる)の鳴き声】
【他にも動画サイトなどで調べてみると面白い鳴き声】
・ホトトギスの鳴き声
・ウグイスの鳴き声
・雁の鳴き声
・鹿の鳴き声(できれば夜)
【お薦めの図鑑】
野鳥400種についての詳しい情報が掲載されています。400種のうち99種については付属のCDで鳴き声が聞けます。CDは雑音が殆どないので、聞き流していると自然の中にいるような気持ちになり、我が子がとても気に入っている図鑑です。
古典音読の効果

古典音読をすると、次のような効果があるとされています。
- 日本語をリズムとして体得するので、助詞の使い方が上達し現代文及び古文の読解力が上がる。
- 古文への関心や親しみを感じ、その後の古文学習への意欲が向上する。
- 日本文化への関心や理解が深まることで、他国文化への理解・ものの見方・感じ方・考え方を深め、心を豊かにする。
- 現代文よりも読みにくいので、間違えないよう注意して読む訓練になる。
古今和歌集を音読した感想
私は学生時代、古文を勉強としてしか捉えていなかったので、文法や言葉を覚えることに難しさを感じて心からは楽しめませんでした。
しかし、自然の美しさと脅威、人としての喜びと悲しみ、年を重ねて時折感じるわびしさなどを知った今、再び古文を読み返してみると、若い頃には感じなかった魅力を感じます。
特に今回取り上げた自然にまつわる短歌は、31文字の中で気持ちや情景を表現しなければならないので、言葉が洗練されていて「美しいな」と心から思いました。感性も瑞々しく素晴らしい。
仮名序にあるように、心に感じたものが言葉として自然と外に溢れ出たものが歌なのだと感じました。
この感動を、そのまま子どもに伝えようと思ってもなかなか難しいかもしれません。

けれども子どもは、理屈抜きでリズムを楽しみ、言葉遊びのように文法なんて気にもせず、すらすらと古文を覚えてしまうのです。音読が苦手な我が子ですら。
もしかしたら、子どもの純粋な感性は平安時代の人々の感性と似ているのかもしれないと感じます。リズムから更に一歩進んだ情景理解へという点においては、子どもが実体験を通して学ぶのが一番の近道だと思います。
生きものに興味を持ち自然現象に敏感になることから始まり、やがて豊かな想像力を育むことが、最終的に自分の内面を観察することへ繋がっていくのではないでしょうか。
千年以上前の人々の歌が、古人も現代人と変わらない想いをしていたことや、現代人が忘れかけてしまった感性があるのではないかということを教えてくれる気がします。
多くのことが急激に変化している今だからこそ、
一度立ち止まり
感性を研ぎ澄ませ
ゆっくりと自己を見つめる時間
が必要だと感じました。
古今和歌集の歌が、現代の誰かにとって、
未来へ一歩進む力を与えてくれる歌になりますように。
