今回工作をするのは、ケプラー式望遠鏡です。
ポテトチップスの筒(チップスターなど)と虫眼鏡などの身近な材料があれば、誰でも簡単に作れるのが最大の魅力です。
高価な天体望遠鏡を買う勇気は出ないけれど、夜空の月や星を観察してもっと宇宙を身近に感じたい!
そうと思っている方に是非おすすめしたい科学工作です。
この記事では、原理を説明しながら、詳しく作り方を説明しています。
想像以上によく見えることにきっと驚かれると思いますよ。夏休みの自由研究にもお薦めです。
ケプラー式望遠鏡とは
ケプラー式望遠鏡は、ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーが発表した屈折望遠鏡の一種です。
対物レンズと接眼レンズという2枚の凸レンズを利用しており、倒立像(180°回転した像)が見えることや視野が広いという特徴があります。
今回工作したケプラー式望遠鏡で遠くに見える対象物を覗いてみたところ、次の写真のように上下が反転した倒立像が見えました。
工作の材料準備
材料は100円ショップなど身近なところで揃うものばかりです。
- ポテトチップスの大きな筒:1本(今回はチップスターを使用)
- ポテトチップスのふた:2つ
- 老眼鏡(今回は百均ダイソーの度数+2.5を使用):1つ
- 虫眼鏡(今回は百均ダイソーの倍率3倍を使用):2つ
- 黒画用紙(今回は百均ダイソーのサイズ363×257mmを使用):1枚
- セロテープ
- カッター
【老眼鏡の形状について】
つる(耳にかける部分)が少々邪魔になるので、今回は元々つるの無いものを購入しました。
可能であれば、レンズを取り外してレンズ1枚を単体で使用すると更に作りやすいです。
※精密ドライバーがあれば、つるの部分を外すことも可能です。
※つるを外さなくても作ることは可能です。
【老眼鏡の度数について】
老眼鏡の度数は+2.5が作りやすいです。
無ければ一段度数を上げて+3.0を使用してみてください。
度数の低い+2.0も使えますが、望遠鏡全体の筒の長さが長くなってしまいます。
望遠鏡の倍率については、次章で説明します。
【虫眼鏡の倍率と形状について】
今回は倍率3倍のものを2枚重ねて使用しました。虫眼鏡の倍率が高いほど望遠鏡の倍率も高くなります。元々2枚レンズがついたデュアルルーペを使用しても作ることが可能です。
デュアルルーペは100円ショップでも販売されていましたので、探してみてください。
望遠鏡の倍率については、次章で説明します。
【黒画用紙のサイズについて】
老眼鏡の度数と虫眼鏡の倍率により必要なサイズが異なりますが、概ねポテトチップスの筒の長さと同等もしくはプラスαの長さが作れる画用紙サイズとなります。
今回は黒画用紙363×257mmを使用して、短辺の長さ257mmの円筒を作りました。
後から筒の長さを追加することも可能ですので、まずはこのくらいの画用紙サイズから作ってみてください。
焦点距離と筒の長さの関係については、次章で説明します。
焦点距離と筒の長さの検討(省略可)
今回は老眼鏡の度数を+2.5、虫眼鏡は倍率3倍のものを二枚重ねで使用しています。
基本的には焦点距離まで確かめる必要はないと思いますが、焦点距離と筒の長さの関係や望遠鏡の倍率について説明しておきます。
焦点距離のチェック
前章にある「図1ケプラー式望遠鏡の断面イメージ図」を見てください。ケプラー式望遠鏡は対物レンズ(老眼鏡)の焦点距離f1と接眼レンズ(虫眼鏡二つ)の焦点距離f2を足した長さの筒が必要になります。
つまり今回の望遠鏡の場合、画用紙で作成する筒X1とポテトチップスの筒X2の長さの和が焦点距離の和より長くならなければなりません。
つまりこんな式になります。
X1+X2 >f1+f2
ですから、老眼鏡と虫眼鏡の焦点距離を太陽光を使って調べてみます。
レンズで太陽を見るのは危険ですので絶対に避けましょう!!
光を集めるとかなり熱くなるので、下に燃えないものを敷くなど注意して行いましょう!
【老眼鏡の焦点距離f1の計測】
太陽光を老眼鏡のレンズに当ててみて、光がなるべく一点に集まるように地面からレンズまでの距離を調整します。
位置が決まったら、レンズと地面の距離をメジャーで計測します。これが老眼鏡の焦点距離f1の値になります。
今回は度数+2.5の老眼鏡で、焦点距離の実測値が400mm弱でした。
度数が大きいほど焦点距離が短くなります。
【虫眼鏡の焦点距離f2の計測】
本来であれば、虫眼鏡を2枚重ねて焦点距離f2を計測するのだと思いますが、上手く計測できませんでした。
そこで、とりあえず虫眼鏡1枚で計測することにしました。なぜならば、虫眼鏡が1枚の方が倍率が低く焦点距離が長くなるので、長い方を計測しておけば安心だからです。
虫眼鏡1枚の焦点距離 > 虫眼鏡2枚の焦点距離
今回は倍率3倍の虫眼鏡を使用しています。実測値は予想していた数字とだいぶ異なりましたが、実測値60mm程度でした。
100円ショップの安価な虫眼鏡なので、計測値にばらつきがあるのかもしれません。
倍率が大きいほど焦点距離は短くなります。
【筒の長さのチェック】
今回は黒画用紙の長さ(X1)が約260mmで、ポテトチップスの筒の長さが約230mm、合計の筒の長さが490mmです。
焦点距離の合算は400mmと60mm未満で460mmより短くなります。
筒の長さは問題なさそうです。
【筒の長さが心配な場合】
筒の長さが足りない時は、最初からもう少し大きな画用紙を使うか、完成してから画用紙で筒の長さを延長してみてください。
望遠鏡の倍率について
望遠鏡の倍率は老眼鏡の度数と虫眼鏡の倍率で決まります。式で表すと次のようになります。
対物レンズの焦点距離 ÷ 接眼レンズの焦点距離
つまり
老眼鏡の焦点距離 ÷ 虫眼鏡2枚の焦点距離
となります。
この式からわかることは、
老眼鏡の度数が低いほど、虫眼鏡の倍率が高いほど、
望遠鏡の倍率が高くなる。
ということです。
今回は、虫眼鏡2枚の焦点距離がわかりませんので、とりあえず1枚の焦点距離の半分と仮定してみました。すると、今回工作するケプラー式望遠鏡の倍率はこのように推測できます。
400 ÷ 30 ≒ 13
およそ13倍ですね。
【レンズ関連の記事】~理系に強くなろう
作り方~ケプラー式望遠鏡
製作時間は大人の手で、30分程でした。
1.チップスターの筒の底に穴をあける。
カッターを使ってチップスターの筒の底を切り抜きましょう。
商品によっては底が固くて抜けにくいものもあります。チップスターなら、柔らかい紙なので切り抜きやすですよ!
2.チップスターのふたに虫眼鏡用の穴をあける。
チップスターのふたのうち1枚を虫眼鏡取り付け用に加工します。ふたの中央に虫眼鏡の大きさの下書き線を書いて、その線より2~3mm内側をカッターで切り抜いてください。
3.ふたに虫眼鏡を取り付ける。
レンズのほこりや汚れをきれいに拭き取ってから、2枚の虫眼鏡をぴったり合わせてセロテープで固定します。
固定した虫眼鏡を2で作成したふたにセロテープで貼り付けます。
4.もう一つのふたに老眼鏡用の穴をあける。
もう一つのふた中央に老眼鏡のレンズ(片側)をあて下書き線を書きます。書いた下書き線より2~3mm内側をカッターで切り抜きます。
5.老眼鏡をふたに付ける。
レンズの凸面を上向きにして、ふたの上から老眼鏡をセロテープで固定します。
6.黒画用紙で筒を作る。
チップスターの筒に黒画用紙を巻きます。スライドさせて使うので動くか確認しながら緩めに巻いてセロテープで仮固定します。
後から先端にふたを取り付けるので、ふたが入るかもチェックしてください。
巻き加減を調整したら、セロテープで本固定します。
7.チップスター本体に虫眼鏡を取り付ける。
チップスターの筒の上部に3で作成した虫眼鏡付きのふたを取り付けます。ふたの取り付けにはセロテープを使用しました。
8.黒画用紙で作成した筒の先端に老眼鏡を取り付ける。
黒画用紙で作成した筒の先端に、5で作成したふたを取り付けます。ふたの取り付けにはセロテープを使用しました。
9.合体させて完成
黒画用紙の筒の中にチップスターの筒を挿入すれば完成です!
注)望遠鏡で太陽を見るのは危険ですので絶対に避けてください!!
1000円以下で市販の天体望遠鏡工作キットも販売されています。
装飾や設置の様子
セロテープを隠すようにホログラムテープを貼ったり、黒画用紙にシールを貼ったり、自由に装飾も楽しんでみてください。
息子は、自ら宇宙の図鑑を取り出して、太陽系の惑星を書きはじめました。星の大きさや順序はかなり微妙ですが、ノリノリで楽しそうに作っていました。
完成品はこちら☆彡
星や月を観察するなら、三脚に固定するのがおすすめです。
我が家では、黒画用紙の部分を少しスライドさせてからチップスターの筒と三脚を固定しました。固定にはひもと養生テープを使用しています。
注)望遠鏡で太陽を見るのは危険ですので絶対に避けてください!!
【図形専用教材・無料体験記事】~理系に強くなろう
自由研究ヒントと観察のお役立ち情報
もし自由研究として天体望遠鏡を工作するなら、せっかくなので関連知識を色々調べてみるとおもしろいですよね。調べることで宇宙への興味につながっていくと思います。
初めて天体観察をするなら、対象となる天体は大きい方が見やすいので、最初に観察するのは月がお薦めです。
【自由研究のヒント】
- 望遠鏡の原理を調べてみる。
- レンズの度数や倍率を変えて、複数の望遠鏡を比較してみる。
- どこまで望遠鏡の倍率が高められるか挑戦してみる。
- 同じ屈折望遠鏡の一種であるガリレオ式望遠鏡も作り、違いを考察してみる。
- 月を観察してみる。
- 月のことを詳しく調べてみる。(皆既月食・部分月食・満ち欠け・スーパームーン・クレーター等・・・。)
など。
【参考になるサイト】
- 生活に役立つ計算サイト keisan
こちらのサイトでは、ホーム>物理公式集>天文>月の位置計算 から月のおおよその位置を推測でき、非常に便利です。気になる方はサイトを検索してみてください。 - YAC日本宇宙少年団
JAXA宇宙教育センターとYACが共同開発した教材が掲載されています。
TOP>教材研究>活動教材一覧>科学工作「焦点距離を変えて、ガリレオ式望遠鏡、ケプラー式望遠鏡を作ろう!」
の中にガリレオ式望遠鏡望遠鏡のつくり方も書かれています。気になる方はサイトを検索してみてください。 - 国立天文台(NAOJ)ほしぞら情報
皆既月食やスーパームーンなど天体ショーの最新情報は、『国立天文台(NAOJ)ほしぞら情報』をこまめにチェックすると入手できます。
国立天文台(NAOJ)ほしぞら情報
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感想
天体望遠鏡の工作自体は、大人が作れば30分程度でできるとても簡単なものでした。
ただし、天体など小さな対象を探し出すことは小学校低学年の子どもには少し難しいかもしれません。小学校中学年くらいの子供なら、自分で観察したり、あれこれ工夫したりできると思います。
今回は三脚に取り付けて半月を観察しましたが、この程度の望遠鏡でもクレーターを見ることが可能です!写真では上手く撮影できなかったので、実際に工作をして是非観察してみてください。
頭の真上に月があると観察しにくいので、月が見える方角や時間も事前に調べておくと安心ですね。
また、できることなら星や小さな月よりも、満月がおすすめです。面積が大きいので、対象を探しやすく、表面の観察もしやすいと思います。
簡単な工作なので、是非試してみてくださいね!