成田奈緒子さん(小児科医)・上岡勇二さん(臨床心理士)著『子どもが幸せになる「正しい睡眠」』という本を読みました。
「いつも不機嫌」「勉強しない」などの子供の心身の困りごとが、実は睡眠と大きく関わっていることなどを知り、子育てにとても役立ちました。
子を持つ親として知っておきたい睡眠に関する疑問の数々。例えば、
・どのくらい睡眠時間が必要なの?
・睡眠のサイクル(周期)はどうなってるの?
・脳の発達との関係はどうなの?
・成長ホルモンの分泌や身長への影響はどうなの?
・どんな環境が睡眠にとってよいの?
・学習面への影響はどうなの?
など幅広い疑問に対する答えが散りばめられている本でした。
驚いたことに、本書によると、脳の発達する順序は必ず決まっているのだそうです。
脳の土台は「体を司る脳」
脳の芯の部分が「体を司る脳」にあたり、0~5歳くらいに最も発達するそうです。例えば食べる、眠るなどもこの部分の働きが関わっています。
この体を司る脳を発達させるために、日常生活でどのようなことを注意すればよいのか、睡眠とどう関わってくるのか指南してくれ、大変参考になりました。
とても興味深いのは、まず「体を司る脳」が土台としてきちんと発達しないと、その後に発達する「勉強やスポーツに関わる脳」や「心の発達に関わる脳」をバランスよく育てていけないという点です。まずは「体を司る脳」の発達をおろそかにしないことがとても重要だと感じました。
主に体に関わる、例えば毎朝ぐずる、なかなか寝てくれないなどの子育ての悩みがある方は、是非参考になさってください。
勉強やスポーツに関わる脳
これぞ脳みそというイメージのシワシワの部分が、「勉強やスポーツに関わる脳」です。本書によると「体を司る脳」から少し遅れて、1~18歳くらいまでに発達するそうです。
日中学んだあらゆることが、睡眠によって脳に整理・収納されていきます。驚くべきは、自分にとって嫌な記憶は奥の方に収納されて思い出しにくくしてくれる点で、本当にうまくできているなと感心させられました。
眠っている間に記憶の整理や定着が行われていますので、朝が一番学習効率がよいことも書かれていました。お子様の勉強面で悩みのある方は、是非読んでみてください。
脳の最終段階は心の発達に関わる脳
主に脳の前方にあたる部分がこの「心の発達に関わる脳」です。
本書では主にセロトニン神経回路について説明されていました。セロトニンとは脳を落ち着かせる物質です。この神経回路が脳の前方部分とがつながることで、「心の発達に関わる脳」として機能し始めるのだそうです。
「勉強やスポーツに関わる脳」により蓄えられた知識などの様々な情報が、ここで整理・統合されると、感情にブレーキをかけたり、論理的に思考したりできるのだそうです。対人関係にも影響してきます。
注目すべきは、他の脳がしっかりと育った10歳以降に初めて育つという点です。小学1年生の我が子に学校の様子を聞くと、ほぼ毎日些細なことで争いが起きています・・・・・・。
どうにかならないものかなと思っていたのですが、脳の育つ順序を知り、まだまだ知識や経験も足りなければ、それらを整理する能力も育っていなかったことがよくわかりました。何事も段階を踏んで一歩ずつ進まないといけないのですね。
すぐキレる、心が折れやすいというお子様の悩みをお持ちの方に是非読んでほしい内容だと感じました。睡眠の重要性と「心の発達に関わる脳」の育て方について詳しく説明されています。
睡眠時間の改善
各年齢ごとの理想的な睡眠時間が記載されていました。因みに7歳の我が子の場合には10時間30分が理想的な睡眠時間だそうです。
もしそうだとすると、9時間しか寝ていない我が子は1時間半も睡眠が不足しています。小学生の平均睡眠時間は理想よりも2時間程度短いのだそうです。日本人は睡眠不足だなと改めて感じました。
そこで問題になるのが、どのように睡眠時間を改善していくのかということです。
本書には、様々な子育ての悩みを抱えるご家族が、1日のスケジュールを見直すことで睡眠時間を確保して、子育ての悩み事までも改善していったという事例がいくつも紹介されています。
思い切って入浴時間を朝に変えたご家庭もあり、よそのご家庭のスケジュールを見るととても参考になります。我が家でも、朝のジョギングの頻度や距離を見直したり、入浴時間を変更して消灯時間を30分早めるなどの改善を早速実施しているところです。
理想通りにはなかなかいかないと思いますが、ご家庭の事情に合わせて、無理せずできるところから少しずつ改善していくのがよいのではないでしょうか。
睡眠にまつわるQ&A
睡眠に関する疑問は意外とたくさんあるものですよね。例えば、
・入浴はいつがよいのか?
・食事は眠る何時間前までにすませるとよいのか?
・照明など光と睡眠の関係はどうなってのか?
・休日の睡眠はどうするのか?
・眠る時の体温変化や体温調節とは?
などといった様々な疑問に対して、本書ではQ&A形式で具体的に指南してくれます。例えば入浴の理想的な時間などは、我が家ではとても実践できそうにありませんが、体にとって何が一番理想なのかを知っておくのはとても良いことだと思いました。
とても参考になります。
いつからでも作り直せる脳
最後になりますが、私が一番心に響いた著者の言葉をご紹介します。
でも、失敗してもあきらめないでください。
脳はいつからでも育て直せます。
どうしようもないほどキレまくっていたのに、家族一丸となり、根性入れて、「正しい睡眠」をとる生活にシフトしたことで、見違えるほどよくなった子どもたちにも、たくさん会ってきたのですから。
※子どもが幸せになる「正しい睡眠」より引用
正に「寝る子は育つ」。心と体はつながっているのだなと改めて感じました。
今の世の中には「○○歳までに~しないといけない」というような、子育て情報がとてもたくさん溢れていて、私自身も情報に踊らされて一人で焦りを募らせてしまうことがあります。
そんな時、確かな知識と経験を持つ専門家の方のアドバイスや、一言が何よりもの救いになることがあります。例えば本を購入する時、その本の著者について調べてみて、自分が信頼できそうな方かどうかを判断してから読み始めるとよいのではないでしょうか。
以前我が子が通っていた療育でも、「自分に受け入れられそうな情報だけ受け入れればいいですよ」とアドバイスをいただいたことがありました。親が少しでも明るい気持ちになれるよう、無理しすぎない子育てをしていけたらよいなと思いました。