五・七・五・七・七というとても短い文字の組み合わせで、人の心や自然の美しさを詠んだ和歌。
その中でも、小学生に最も馴染みのある『百人一首』(撰者:藤原定家)を楽しく覚える方法をお伝えします。
聞き覚えのない作者名や、古文独特の表現に苦戦して、その上”百首”もあるなんて絶対に覚えられない!?
子供ならきっと、始めはそう感じると思います。
でも、それは、”とても もったいない!” かもしれません。
知れば知るほど楽しい『百人一首』は、歴史を学ぶことにもつながります!
- 全部覚えようとせず、まず興味のあることから。
↓ - 興味のあることは記憶に残りやすい。
↓ - 興味を起点に、知らず知らずに知識が広がる『ツリー方式』。
本記事では、小学生の我が子と実践している、頑張りすぎずに楽しく百人一首を覚える方法をご紹介しています。
是非、各ご家庭でオリジナルの楽しみ方を探して、声に出して暗唱音読をしてみてください!
小学生からの楽しい覚え方~好きから始めるツリー方式
まず、何かお好きな百人一首の本を1冊手元に準備すると安心です。
書店に行くと、小学生から楽しめるマンガの百人一首本がたくさん並んでいますので、お好みのものを探してみてください。
我が家には、2冊の百人一首のマンガ本があります。
ある程度百人一首を知っている方は、五十音順に並べられた本だと辞書のような活用の仕方ができます。
もし、初めてであれば歌番号順のものがお薦めです。ほぼ年代順なので、歴史の流れも追いやすいですよ。
用意した本をパラパラめくりながら、気になった歌を探してみましょう!
例えば動物が気になったら、動物の歌を探して動物ごとに分類したりしてみると、少しずつ親近感がわいてくるかもしれません。
上の図のように、興味のある事柄を起点にして、それに関連する歌をツリー状に書き出してみるのがお薦めです。
まずは一首から、お気に入りを探してみましょう!楽しく覚えるのが一番!
小学生の息子は、お気に入りの『ちびまる子ちゃん満点ゲットシリーズ 暗誦百人一首(集英社)』で、マンガの面白さを基準に覚えているようです・・・。
この百人一首マンガ本の【特徴】は、
- 歌番号順(年代順)なので、歴史や人物を追いやすい。
- 少し脱線した笑える4コマ漫画が小学生にちょうどよい。
(息子曰く、長い漫画より印象に残るそう。) - マンガ以外の解説や当時の暮らしなどの情報が豊富。
- 人物一人あたり10ページ程度の伝記マンガが5つ入っており、歴史も学べる。
- 覚え方のアイデアがたくさん掲載されている。
(例えば、ツッコミで覚える方法や、各学校での取り組み案など。)
\ こちらの本も息子のお気に入りです /
【関連記事】
百人一首の覚え方 例)其の一 ~興味を起点に!
小学生でも楽しく百人一首覚える方法として、興味のあることを出発点にしてみる覚え方があります。
まずは、面白そうな一首を探してみましょう!
興味がわくと、もっと知りたくなって、そして疑問も生まれるかもしれません。
もしそうなったら、百人一首を覚えるチャンス到来です!
この章では、いくつか例をあげて説明していきます。
◆掛詞(かけことば)
【歌番号20番】
わびぬれば 今はたおなじ 難波なる みをつくしても あはむとぞ思ふ
身を尽くすと澪標(みおつくし)の言葉を掛けています。
澪標(みおつくし)とは、船の航路を示す木の杭のことです。
私は澪標の形が印象に残ったのですが、息子は百人一首本の3コマ漫画のおちが気に入ったようです・・・。
作者渾身の工夫を、「ダジャレなんかーい!?」と笑う小学生の息子でした。
意外と掛詞がツボみたいです。
掛詞は百人一首の中にたくさん出てきます。
中には、小学生には少々わかりにくいものも含まれていますが、お気に入りを探してみてはいかがでしょうか。
◆月
百人一首には、よく『月』が登場します。
月を見てしみじみと何か物思いにふけている様子や、感情を重ねる程月に親しみを感じていた様子が想像できます。
月は現代を生きる私達にも馴染みの深いものなので、『月』を起点にお気に入りの歌を探してみても楽しいですよ。
例えば、
- ”有明(ありあけ)の月ってどんな月だろう?”とか、”夜半(よわ)の月ってどんな月だろう?”と調べてみる。
- ”そんな時間にどうして月を眺めていたのだろう?”という疑問から、『通い婚など平安貴族の暮らし』について調べてみる。
など、気になった事から調べてみてはいかがでしょうか。
ただ単に百人一首を覚えるのとは一味違う楽しみ方ができ、作者や歌に愛着を感じられる気がします。良かったらお試しくださいね。
◆動物
百人一首の中には動物もたくさん登場します!
動物好きのお子様は是非探してみてください!
私個人としては、『鹿』の歌が印象的です。
なぜならば、鹿の声を知らなかったからです。
”山奥で鹿の声を聞いたらどんな気持ちになるのだろう?”、”本当に鹿の声を聞いてそんな気持ちになるのだろうか?” そんな風に感じてしまいました。
鹿の声に興味のある方は、是非YouTubeで鳴き声を検索してみてください!
公園ではなく、山奥で響きわたる声がお薦めですよ。
百人一首を覚える方法として、『五感』は結構大事な気がします。
作者の気持ちがよくわかるほど、何とも言えない切ない声でした。
★こんな生き物も探してみて!
鳥:山鳥(きじ)、鳥(にわとり)、千鳥、ほととぎす、かささぎ
虫:きりぎりす
百人一首の覚え方 例)其の二 ~歴史上人物を起点に!
小学生でも中学年くらいになると、少しずつ歴史に興味も出てくるかもしれません。
興味があるお子様は、歴史の流れと百人一首を関連付けて調べてみると楽しいと思います。
思いつきや知識の断片を少しずつ繋ぎ合わせて、自分だけのオリジナルの連想ゲームを楽しんでみてください!
例えば、『ちびまる子ちゃん満点ゲットシリーズ 暗誦百人一首(集英社)』の中には、人物の伝記のマンガが5つ入っています。(1つあたり10ページ程度。)
これを読むだけでも、歴史的な背景を感じることができます。
この伝記マンガから3つ、
①清少納言と紫式部
②西行法師
③後鳥羽院
を例に百人一首を覚えるアイデアをご紹介していきます。
更に可能であれば、歴史の教科書もしくは歴史マンガ(平安~鎌倉)などの参考本があると、何倍も百人一首を楽しめ、歌を覚える助けになると思います。
我が家では、『角川まんが学習シリーズ日本の歴史』を使っています。
絵が現代風で、「歴史の大きな流れをつかむ」という基本理念があるので、初めての子供でも馴染みやすい学習マンガ本だと思います。
我が家では、歴史の学習マンガを読んで流れをつかんだ後に、百人一首の本で作者の名前をパラパラとチェックしています。
”この名前知ってるな。”、”この人とこの人は関係があったよな。”というようにつながりを見つけて楽しんでいます。
エピソードを知ってから歌を読むと、作者の気持ちがよく伝わってくるのでお薦めですよ。
また、エピソード記憶は暗記する時にとても役に立ちます。
◆清少納言と紫式部
平安時代を代表する女性の文学作家・清少納言と紫式部は、ほぼ同時期に天皇や皇后が住む宮中で仕えていたという共通点があります。(上図の人物相関図を参照。)
これを頭に入れた上で、清少納言と紫式部それぞれに注目して、関連する人物をまとめていきます。
●清少納言 編
色付きの人物は百人一首に登場する人物で、()内の番号は百人一首の歌番号になっています。
相関図を作りながら、歌の意味や背景を調べてみてくださいね!
●紫式部 編
気になる事柄は、子供一人一人違います。
興味の赴くままにどんどんつなげてみてください!
例えば、歌番号60番 小式部内侍の
大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立
という一首は、歌の上手な母親が代作しているのでは?と疑われてからかわれた小式部内侍が、即興で詠んで相手を驚かせた歌です。
『からかった相手』が気になったは、百人一首の作者の中にいるので調べてみてください。
”その後二人はどうなったのか。” や ”小式部内侍はどんな人生を送ったのか。” も調べてみると、楽しいと思います。
また、『天の橋立』が日本三景の一つだという点が気になった方は、他にも日本三景が詠まれていないか調べてみることもできます。
(百人一首の中には、他にも日本三景について詠まれた歌がありますよ!)
◆後鳥羽院(後鳥羽上皇)
後鳥羽院(後鳥羽上皇)は、有名な和歌集『新古今和歌集』作らせた和歌好きの文化人でもありますが、鎌倉幕府を倒幕して武士から権威を取り戻そうと『承久の乱』を起こした人物としても、日本の歴史に登場します。
この後鳥羽院に注目すると、このような相関図ができます。
百人一首(小倉百人一首)の撰者でもある藤原定家ともつながりますよ!
歴史に興味のある方は、是非調べてみてください。
◆西行法師
最後に西行法師(百人一首86番)をご紹介します。
関連している百人一首の作者は崇徳院(百人一首77番)くらいかもしれませんが、西行法師の一生をたどると、この時代の歴史の流れをとても感じることができる気がします。
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白河上皇が始めた院政(天皇ではなく上皇が政治を行うこと)の時代、院の警護をしていたのが北面武士達(院御所の北側に配備された警備担当の武士)でした。
西行法師は、実は出家前は北面武士で、平清盛と同時期に院の警護をしていたそうです。
鳥羽院(鳥羽上皇)や崇徳院(崇徳上皇)にも目をかけられていたのですが、保元の乱など権力争いを目にする中で、20代という若さで妻子を捨てて出家しました。
保元の乱で敗れ無念のうちになくなった崇徳院の供養をするなど、戦乱を避けて僧侶として生きた人です。
平家の台頭、繁栄、そして壇ノ浦の戦いでの滅亡など、栄枯盛衰を目にしながら、晩年には源頼朝にも遭遇しているのです。
西行の穏やかな最期の様子から、戦乱の世にもこのような生き方もあるのだと知りました。
また、後の世に登場する俳人・松尾芭蕉などにも影響を与えた歌人であり、伊勢の二見浦に建てた小さな家で和歌に打ち込んだそうです。
百人一首を覚える中で興味のある事柄をどんどんつなげて調べてみると、歴史を感じ、その時代の人々をとても身近に感じることができると思います。
しっかり調べれば、夏休みの自由研究にもなると思いました。
是非自分なりの覚え方を見つけてどんどん楽しんでください!