この記事では、子どもを持って初めて百人一首の楽しさを知った私が、『本当に楽しいから心からお薦めしたい百人一首』の覚え方や楽しみ方を、私達親子の実例を交えながらお伝えしています。
私達の周りには楽しいことや楽しいものが溢れていますが、和歌が盛んに詠まれていた時代には、それ程多くのものは無かったのだろうと思います。
その分、当時の人々の感性は研ぎ澄まされていて、短い人生の中においても、自然を愛でたり物思いに耽ったりしながら、美しい言葉の世界に心を浸して豊かな時間を楽しんでいたのではないでしょうか。
辛いことがあるのは、今も昔も同じこと。
美しい月や美しい四季があるのも今とそれ程変わらない。
時代が変わっても、当時の人々をとても身近に感じて共感できる点が、大人にとっても魅力だと思います。
子どもにも魅力が伝わるのだろうか?
それは、正直なところわかりません。
でも、『子どもは楽しいことを見つける天才』だと息子を見ていて感じます。
競い合う事、面白い言葉の響き、歴史・・・。一人一人違った楽しみ方をすれば良いのではないでしょうか。
大きくなった時、本当の良さがわかる日がきっと来ると思います。
皆さんにも、百人一首で子供との楽しい時間を過ごしてもらえたら嬉しいです。
百人一首の覚え方1~『五色百人一首』を使おう!
覚える枚数を少なくして、そればかりを何度も繰り返すと、不思議とすぐに頭に入るのでお薦めです。
そんな時にとても便利なのが、100枚を5色に分けた『五色百人一首』です。
青20枚・ピンク20枚・黄色20枚・緑20枚・オレンジ20枚の合計100枚で構成されています。
例えば、「青の20枚だけ覚えてみよう!」
という覚え方も可能です。
また、裏に上の句が書いてあるので、読み上げられている時間以外は裏を確認できます。これが息子にとても好評で、限られた時間に何とか覚えようとして子供ならではの物凄い記憶力を発揮するのです。
どうしても覚えられない時は、20枚を更に半分に分けて10枚にするとかなり覚えやすくなります。
息子は競い合うことがとても楽しいようで、ほぼ毎朝登校前に私と対戦してから出かけます。朝はさすがに時間が無いので、10枚で対戦しています。(10枚なら5分程度で終わりますよ。)
百人一首の覚え方2~ 気になる句を探そう!
興味を持つことが何より大切だと思いますので、まずは直観で気になる歌を探してみるのもお薦めです。
【息子がお気に入りの歌】
かわいそうな、みかちゃん。
【天の原 ふりさけ見れば 春日なる みかさの山に 出でし月かも】
息子が、『みかさの山のみかちゃん』と呼んでいる歌があります。
遣唐使として唐に行った作者・安倍仲麻呂が、故郷を思い浮かべ詠んだ歌です。息子曰く、彼の一生を知ってこの歌を読むと、とても切ない気持ちになるそうです。
(余談)
作者の名前がどうしても覚えられず、柿本人麻呂と混同してしまうそうです・・・。
ついつい、『安倍人麻呂』と言ってしまいます。
「まにまにの菅家」は、僕が取らせてもらうから!
【此の度は 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに】
作者は、菅家です。
息子曰く、学問の神様とも言われる菅原道真公の尊称が「菅家」というのが、まず一つ面白かったそうです。そして、なんだか耳から離れない「神のまにまに」の「まにまに~」がとっても気に入っているようで、この札を「まにまにの菅家」と呼んでいる息子です。
玉って、真珠のことだからね!
【白露に 風の吹きしく 秋の野は 貫きとめぬ 玉ぞ散りける】
秋の野の朝露を真珠に見立てて詠んだ美しい歌ですが、息子にとっては、『玉=真珠』と知っていること自体が嬉しいようで、我が家では『玉は真珠』が合言葉のようになっています。
【息子が気になる作者】
出たー、きいばぁ!
【音に聞く 高師の浜の あだ浪は かけじや袖の ぬれもこそすれ】
作者は、祐子内親王家紀伊です。
恋の歌を競う歌合で、男性の歌に対して詠んだ女性の返しの歌なのですが、実は、詠んでいる作者はお婆さん!若い女性の気持ちになって作った歌なのです。
だから息子は、この札を見ると「きいばぁ」が出た、お婆さんなのに!?と笑っています。
蝉丸、取りたい!
【これや此の 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関】
生き物好きの息子は、名前に蝉が付く『蝉丸』の札に反応してしまいます。
関所での人々の出会いや別れを、人生と重ね合わせて詠んでいますが、子どもにとっては、『セミ』の方が重要みたいです。
伝説の猿丸大夫だ!
【奥山に 紅葉ふみ分け なく鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき】
作者の猿丸大夫は、実在したかどうかもわからない伝説の人物だそうです。作者が猿で、歌が鹿!内容も理解しやすいという点で、息子のお気に入りの歌なのです。
百人一首の覚え方3~ 人生を味わってみよう!
私が好きな作者は、百人一首86番の西行法師です。
【嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな】
月を眺めて涙を流している西行法師は、一体どんな思いだったのでしょう。彼の一生を知るほどに、そんなことが気になってしまう私です。
西行法師は、平清盛と同じ時期に上皇の警備などをしていた位の高い武士でしたが、戦乱の世に別れを告げ23才で妻子を捨てて出家しました。
和歌の腕前は天皇や上皇にも目をかけられるほどで、旅をしながら歌を読むというスタイルは、松尾芭蕉らにも受け継がれたたそうです。
晩年に詠んだ歌の中で願った通り、満開の桜の下で生涯を閉じている西行法師。
もし機会があれば、西行の一生を調べてみてください。
きっと、動乱の世を思いのまま走り抜けた方なのだと思います。
百人一首の覚え方4~ 歴史に注目してみよう!
歴史に注目して覚えると、エピソードとして頭に残りやすいのでお薦めです!
日本史の学習にも役立ちます。
持統天皇って女なんだ!
あ、ちょっと待って!知ってる知ってる!
あの腹黒猫だ!?
猫???
(息子の大好きなねこねこ日本史というマンガに出てくるとのこと。)
【春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山】
初夏のさわやかな光景を詠んだ歌なのですが、作者の持統天皇が天皇に即位するまでの歴史を『ねこねこ日本史』というマンガで知っていた息子には、腹黒猫に見えてしまったそうです。
壬申の乱という歴史的に重要な出来事に深く関わっている人物なので、歴史の学びにもつながります。息子に聞いてみたところ、ねこねこ日本史のジュニア版②・⑧に詳しく出ているそうです。
(何巻から読んでも楽しめる4コマ漫画です。)
百人一首に登場する柿本人麻呂も持統天皇と関わりが深いので読むと面白いと思います。
角川まんが学習シリーズ日本の歴史だと2巻にも詳しく書かれています。
百人一首の覚え方5~ 決まり字から覚えよう!
百人一首は、5・7・5・7・7の31文字から成る和歌ですが、一字決まりの歌(上の句の最初の一文字だけで下の句の札がわかる歌)が、7首だけあります。
例えば、『ほ』から始まる歌は、たった一首。
【ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる】
一字決まりの7首は、「む・す・め・ふ・さ・ほ・せ」の語呂合わせでも知られています。7首しかないので、覚えてみるのもお薦めです。一字で札を取れたらかっこいいですよね!
息子の場合は、なぜか「ほ」と「む」から始まる歌を絶対取りたいと毎回気合を入れています。
「ほととぎす」と「村雨」は取るぞ~!!
百人一首の覚え方6~ 音にも注目!
ただ覚えるよりも、興味を持ってから覚える方が頭に入りますよね。
我が家では、歌に出てくる音にも注目して、YouTubeなどで音声を調べて楽しんでいます。
【音が出てくる歌】
- 78番:千鳥の鳴き声
- 5番・83番:鹿の鳴き声(特に雄)
- 91番:きりぎりす(現代のコオロギ)の鳴き声
- 94番:砧を打つ音
- 62番:朝を告げるにわとりの鳴き声
息子は、砧という木槌のようなものを打っている音が気になったようで、自らYouTubeで調べていました。
えー、思っていた音よりも地味じゃん。
百人一首の覚え方7~ もっと興味を持てば楽しみ倍増!
百人一首のマンガの解説本を何冊か持っていますが、小学4年生の現在、息子が一番はまっている永岡書店『マンガでわかる!10才までに覚えたい百人一首』という本をご紹介します。
詳しい解説が書いてある本を一冊持っていると、さらに百人一首に興味を持てると思います。
【この本の特徴】
①マンガだから
マンガだから、古典でもスッと頭に入ってきます。
②番号順だから
百人一首は、歌に1~100までの番号がついています。
この番号は、概ね時代順になっています。
この本は番号順に歌を解説しているので、歴史を追いながら楽しむことができます。時代ごとの歴史年表もあるので、日本史に詳しくなれます。
例えば、93番・鎌倉右大臣(本名:源実朝)の歌
【世の中は 常にもがもな 渚こぐ 海士の小舟の 綱手かなしも】
この歌は、鎌倉幕府第三代将軍になった源実朝が、どのような運命をたどったのかを知っているのといないのとでは、歌から伝わってくる印象もだいぶ変わると思います。
③決まり字を覚えやすい!
この本は、決まり字を覚える語呂合わせや、
決まり字を書いた暗記ポスターがついています。
決まり字かから引ける索引もあって便利です。
決まり字を覚えると、更にかるた遊びが楽しくなりますよ!
④人物相関図がかなり詳しい!
この本では、時代ごとに詳しい人物相関図がついています。
最初から覚える必要は全くないと思います。
百人一首を知っていくうちに、この人とこの人は親子だったんだとか、同じ人に仕えていたんだなどと発見が増えていくと、歌を覚える時にも結構役に立ちますよ。
⑤文学作品についても詳しくなれる!
この本には、歌の解説だけではなく、作者についても詳しく解説されているため、文学作品にも詳しくなることができます。
清少納言の枕草子、紀貫之の土佐日記などなど・・・・・・。
国語の授業で無味乾燥な丸暗記をするよりは、百人一首を覚える中で作者のことも一緒に知ることが近道だと思います。特に中学以降の国語で役に立つと思いますよ。
⑥索引がとにかく豊富で調べやすい!
この本は、驚くほど索引が豊富です。
- 上の句さくいん
- 下の句さくいん
- 決まり字さくいん
- 歌人名さくいん
- 語句さくいん
これが、本当に優れものなのです!
息子は、よく、上の句だけ覚えているけれど下の句は別の歌にしてしまったり、逆に下の句だけは覚えているけれど上の句は何だっけ?ということが起きるのです。そんな時に活躍します。
また、こんなこともありました。
大江山~の小式部内侍のお母さんって、和泉式部だよね。
でも、お母さんの歌は全然覚えてないんだけど、何だっけ?
そんな時は、歌人名さくいんが本当に便利です。
⑦遊び方いろいろ!
私も初めは知らなかったのですが、百人一首の遊び方は一つではありません。
この本には、
- ちらし取り
- 源平合戦
- 坊主めくり
- 競技かるた
の遊び方の取説があり、便利です!