光の『偏光』という性質を利用すると、カラフルでキラキラしたステンドグラスのような万華鏡を簡単に作ることができます。
普段はあまり意識していない光の性質を詳しく説明しながら、偏光万華鏡の作り方を3パターンご紹介します。
偏光万華鏡のつくり方
偏光万華鏡を作るには、「偏光板」という材料が必要です。
偏光板さえあれば、作り方はとても簡単!偏光板は、ネット通販で色々を販売されています。
【注意!】万華鏡で太陽を直接見る事は絶対に避けてください。
パターン1 星形の偏光万華鏡
少しだけ手をかけて、天の川に因んだ星形万華鏡を作ってみました。七夕の工作にもなるかもしれませんね。
【材料】
- 偏光板6cm角程度(今回は厚さ0.2mmを使用):2枚
※偏光板はハサミでカットすることができます。
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- 透明なプラスチック板(今回はプラ板を使用):1枚
透明な薄いプラスチックならOK。OPPフィルムなど薄いものも使えます。
- チップスターの筒とふた:各1個
- 色画用紙
- セロテープ
- ハサミ
- カッター
- 装飾材料(シールやテープなど)
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【作り方】
1.チップスターのふたに円形の穴を開ける。
縁を5mm程度残して、カッターで円形にくり抜きます。
2.チップスターのふたに偏光板を1枚貼る。
偏光板1枚をふたにはまるサイズに調整します。
ふたより少し大きめの四角にカットしてから四つ角を少しずつ落として調整すると、写真のようにふたの縁にはめ込むことができます。1でくり抜いた円形の穴を全て覆うようにしてください。
方向や裏表は気にしなくて大丈夫です。表面に保護フィルムが付いている時は剥がしてから使いましょう。
上手くはめこむことができなければ、何か所か端の方をセロテープで固定してください。
3.チップスターの筒の底に星形の穴を開ける。
カッターを使い、1で開けた円形の穴より小さく星形にくり抜きます。
星はある程度面積があった方がよいので、少し太めに作ってください。
カッターでくり抜く時は、あまり力を入れず何回か同じ場所を切りながら慎重に切ってください。先に直線部を切って、最後に5つの頂点を切り離すとやりやすいと思います。
もしも破れてしまったり、バリが気になる時は、セロテープで補修しましょう。
4.プラスチック板にセロテープを貼る。
プラスチック板は星形を覆うサイズにカットしておきます。セロテープを貼る方向が重要になってくるので、上下がわかるようにマジックなどで印をつけておくのがおすすめです。今回はプラ板の上端に赤い油性ペンで印をつけました。
図のように、プラ板の上端を上にして机に置き、なるべくセロテープが斜めになるようにプラ板の上に貼っていきます。(十字に貼るとあまり色が出ません。)
長めにセロテープを切ってからセロテープの端をつかみ、プラ板を机に貼り付けるようにしていくと、指紋が付きにくいです。
色々な方向、そして何層にも重ねる方が模様が綺麗です。ただし、あまりに貼りすぎるを光を通しにくくなります。
5.偏光板1枚をチップスター筒の底に貼り付ける。
偏光板には光を通す(通さない)方向があります。購入した板に書いてあると思いますが、わからなければ購入した四角い偏光板の水平方向と垂直方向がその方向だと思ってください。
方向を意識した方が綺麗に作れると思いますので、図のように丸印の位置か四角印の位置のいずれか一点に印をつけておきましょう。(※写真は四角い偏光板の角を落としてあるので、八角形に見えます。)
チップスターの箱の底にセロテープで固定しましょう。どこを上端にしてもOKです。また、裏表も気にしなくて大丈夫です。
6.模様や色の確認をする。
4で作成したプラスチック板をセロテープ面を下にして星形の上に乗せます。プラスチック板と偏光板の上端を示す印を合わせて乗せてみてください。
その上から2で作成したふたを乗せて、覗いてみてください。ふたを回すとステンドグラスのような模様が変化する様子が見えると思います。
次に、プラスチック板を少し回転してから同様に覗いてみます。プラスチック板を置く角度でも色が変わってきますのでお好みの色を探ってくださいね。
もっと細かい模様が良い場合にはセロテープをプラスチック板に追加で貼ってみてください。セロテープの角度や重ねた枚数によっても色や模様が変化します。
他にも色を変える方法があります!今回使ったのはOPPシート。
プラスチック板の材質によっても色が変わってきます。今回使用したプラ板では赤色が出にくかったので、こんな工夫をしました。
それは、ダイレクトメールや商品を入れる透明のOPPシートをプラ板の上に貼り付けるという方法です。
こだわりたい方は色々な素材で試してみてくださいね。
7.プラスチック板を貼る。
模様や色が確定したら、プラスチック板をセロテープで固定してください。
8.色画用紙で筒を作る。
筒に色画用紙を巻き付けて一旦テープで仮止めしておきます。筒の上端から1.5cmくらいあけておきましょう。
チップスター筒の底にふたを置いて、画用紙がふたの中にぴったり入る径になるように調整してください。
画用紙の径が決まったら、セロテープでふたと画用紙を貼り付けて、色画用紙とふたでチップスターの筒よりひと回り大きい筒を作ります。
9.装飾をして完成。
あとはセロテープを隠すように飾りのテープを貼ったり、お好みのシールを貼って自由に装飾すれば完成です。
【覗いてみると・・・】
色画用紙の筒の部分を回すたびにステンドグラスのような模様の色が刻々と変化します。
不思議ですよね☆
パターン2 プリズム×偏光万華鏡
次は、パターン1で作った星形偏光万華鏡のアレンジです。
【追加材料】
- チップスターのふた:1個
- 分光シート3cm角程度:1枚
分光シートの詳しい原理などについては、プリズム万華鏡の記事を参照してください。
【作り方】
チップスターのふたに2cm×2.5cm程度の覗き穴を付けて、分光シートを貼り付けます。あとはパターン1で作った星形偏光万華鏡の覗き穴に、このふたを付けて覗いてみるだけです。
【覗いてみると・・・】
こんな感じで周囲に虹色が浮かびます。
また違った雰囲気を楽しめますよ☆
パターン3 一番簡単!カッターを使わない偏光万華鏡
偏光万華鏡をもっと簡単に作る方法のご紹介です。
カッターを使わずにハサミで穴を開けますので、比較的小さなお子様でも安心です。
【材料】※パターン1からの変更点を記載
- 紙コップ:2個
※パターン1のチップスター筒とふたを紙コップに置き換えます。 - カッターは使用しません。
- プラ板の代わりにOPPシートを使用しました。
【作り方】
1.紙コップ1つの底を円形にくり抜く。
図のように、まず中央に穴を開けて、その穴から徐々に外側にむかって渦巻きのようにハサミで切っていきます。お子様は上手く切れないかもしれませんが、四角やいびつな丸になってもそれはそれで味だと思って楽しみましょう。破れたらセロテープなどで補修すればOK!
縁は5mm以上残しておいてください。
2.1で作った紙コップの底に偏光シートを貼る。
貼り方は、パターン1の2を参考にしてください。
※この紙コップが万華鏡の外側になります。
3.もう1つの紙コップの底も円形にくり抜く。
1でくり抜いた円よりも少し小さな径にすると仕上がりが綺麗です。ハサミを使って同じようにくり抜いてください。
4.プラスチック板にセロテープを貼る。
今回は、プラ板ではなくペラペラのOPPシートを使ってみました。ダイレクトメールや商品を入れるのに使う透明の袋などです。プラ板とは違った色味になりましたよ!
作り方は、パターン1の4を参考にしてください。
5.3でくり抜いた紙コップの底に、シートを貼る。
3でくり抜いた紙コップの底に、偏光シート、4で作ったプラスチック板の順で貼りつけます。
貼り方は、パターン1の5&6を参考にしてください。
※このコップが万華鏡の内側になります。
6.2つのコップを重ねて完成。
5で作った紙コップに、2で作った紙コップを重ねれば完成!
【覗いてみると・・・】
更に、プラスチック板の貼る方向を変えてみると色も変わってきますよ。
いくらでも色が変えられるので、大人の方が夢中になってしまうかもしれません。
偏光万華鏡の原理
偏光万華鏡は光の「偏光」という性質を利用しています。これは高校物理の範囲で子どもには難しすぎると思います。
そこで当サイトでは、親子でイメージを掴むことを目的として、概要を解説したいと思います。
【参考サイト】
国立科学博物館学ぶ物理学<まぼろしの壁/偏光板>
偏光板とは
普通の光は、あらゆる方向に振動しています。この光のうち、ある一定の方向に振動する光のことを偏光といいます。
偏光には、直線偏光、円偏光、楕円偏光などの種類があります。
今回偏光万華鏡に使用した偏光板は、わかりやすく表現すると一定方向にスリットが入ったようなものだと考えてください。偏光板を通過した光はスリットの向きの直線偏光に変化します。
※直線偏光は単に偏光と呼ぶこともあります。
例えば、偏光板を2枚重ねた場合を考えてみます。
1枚目の偏光板の透過方向が縦ならば、1枚目を通過後には縦向きの直線偏光(図2①)になります。同様に、横なら横方向の直線偏光(図2②)、斜めなら斜め方向の直線偏光(図2③)になります。
これらの直線偏光が、透過方向が縦である2枚目の偏光板に入射した場合どうなるかを示した図が、次の図2になります。
図2からわかるように、1枚目と2枚目の偏光板の透過方向が、直角に近づく程透過する光が弱まります。そして直角になった場合には、光を通しません。
2枚の偏光板を重ねて、実際に試してみてくださいね。
セロテープの効果とは
では、2枚の偏光板の間にセロテープが挟んだ場合、光はどのように進むのでしょうか?
それを示したのが、次の図3です。
まずセロテープは長さ方向に引っ張りながら製造されるため、長さ方向と幅方向とで屈折率が異なります。屈折率が異なるとそれぞれの方向で光の進む速度が変わります。つまり光が2方向に分かれます。
このように、光が複数の方向に分かれる現象を複屈折と言います。
セロテープに対して45°に直線偏光が入射した場合、セロテープの内部では長さ方向の波(青)と幅方向の波(ピンク)に分かれます。この2つの波を合成した合成波は、円偏光や楕円偏光や直線偏光など、偏光状態の変化を繰り返しながらセロテープ内を進んでいきます。
因みに、2つの波の山の位置(位相)がどれくらいずれるかにより、偏光状態が変化します。詳しくは高校物理で習うと思います。
そして最後にセロテープを抜けた時の偏光状態がそのまま保たれるのです。
しかし人間の目ではそれぞれの偏光の光の強さを認識することができないため、この時点では光に色がついているようには見えません。
2枚目の偏光板を通過することで初めて色が認識できるようになります。
なぜ色々な色に見えるのか
では、なぜ様々な色が見えるのでしょうか?
それにはまず、人間が普段目にしている光は、実は7色であることを知る必要があります。全て色が混ざると色が見えなくなるので普段は7色に見えませんが、虹のように光が分かれると7色が現れますよね。
光とは波です。波形の山から山までの距離を波長と言いますが、波長の短い青い光と波長の長い赤い光の2種類がセロテープ内を通過した時のことを考えてみます。
波長が短い青い光は、偏光状態の変化が速くなります。一方、波長の長い赤い光は偏光状態の変化が遅くなります。つまり、セロテープを抜けた時点での偏光状態が青い光と赤い光で異なってしまうのです。
図5を見ながら考えてみてください。
例えば赤い光が縦長の楕円偏光で、青い光が横長の楕円偏光の状態で2枚目の偏光板に入射した場合には、縦長の赤い光の方が強くなるので赤みの強い色にまります。
どのような偏光状態で2枚目に入射したかによって光の強さが異なり、強い光の色が目に見えるというわけです。他の色についても同様のことが言えますので、様々な色に見えるのです。
子どもと学ぶ
例えば、家にある揚げ物の油切りとモールで、偏光板の仕組みを説明するとこんな感じです。
液晶画面には偏光板が使用されてるので、ノートパソコンに偏光板をあてて回転させるとこんな感じに。
セロテープ内で起こる複屈折は、プラスチックの歪みでも起こります。透明なプラスチック製品を偏光板の間に挟んでみましょう。
タマムシなどの昆虫が持つ構造色も、複屈折が関係しています。
息子が「光ってずいぶん不思議なんだねー。」と言っていました。
光が7色の波であること、色々と変化すること、そんな感じでちょっと身近に感じるくらいでよいと思います。いつの日か学校で勉強した時に、「もしかして、このことかな?」と思い出してくれたら嬉しいですね。
皆さんも是非、偏光板で科学遊び(実験)を試してみてください☆彡