昆虫飼育は、昆虫の生態の不思議に触れる絶好の機会ですが、予期せぬ事態にもしばしば遭遇します。
しかし、子どもは失敗やわからない出来ごとに出会った時ほど、そこから多くのことを学んでいます。なぜならば、自分の頭を使ってあれこれ必死に考えているからです。
この記事では、お子様と一緒にアゲハチョウを飼育してみようかな・・・と思った親御さんに向けて、飼育のコツやよくあるトラブルや注意点などを詳しく解説しています。
とは言え、昆虫飼育をサポートする親が昆虫嫌いである場合、やはり家で虫を飼うことに二の足を踏んでしまいますよね。
私自身も、子ども時代から虫が大の苦手です。しかしそんなことにはお構いなしの息子に懇願され、今までに5~6回アゲハチョウを飼育してきました。今でも苦手ですが、自分が育てたアゲハが空に旅立っていく姿は何回見ても感動します。
素手で触れなくても大丈夫です!
親だけはこっそり予習をして、”転ばぬ先の杖”で、子どもからの唐突なリクエストを乗り切りましょう!愛着がわくと、意外と可愛いですよ!
アゲハチョウは、とても美しく、短い期間で幼虫から蝶へと完全変態する様子が観察できます。
アゲハチョウはどこに来る?
街路樹や公園の樹木にくるアゲハチョウもいますが、よく庭先やベランダの植物に産卵しにやってくるのは、アゲハ(ナミアゲハ)もしくはキアゲハであることが多いと思います。
素手での採取に抵抗がある方は、園芸用手袋をするかお箸などで優しく掴めば捕まえられますよ。葉ごと切り取っても大丈夫です。
家にセリ科の植物がありますか?
ニンジン・イタリアンパセリ・パセリ・アシタバ・三つ葉などセリ科の植物を育てていて、その葉が食害されていたら、犯人はキアゲハの幼虫である可能性が高いです。
生まれてすぐは黒っぽい色、その後脱皮をすると鳥のふんのように黒の中に白が混ざった色になります。そして最後は緑や黒のしま模様の幼虫へと変化します。
くっきりとしま模様が出ている幼虫は近いうちに蛹(さなぎ)になる終齢幼虫(幼虫の最終形状)です。
我が家では、コリアンダー・ディル・イタリアンパセリ・ミニ人参を育てたことがありますが、特にイタリアンパセリとミニ人参は、葉が丸坊主になるほど幼虫のお気に入りみたいです。
家にミカン科の木がありますか?
ミカン・ユズ・レモン・カラタチ・キンカン・サンショウなどのミカン科の木が家にあり、その葉が食害されていたら、犯人はアゲハ(ナミアゲハ)である可能性が高いです。
途中まではキアゲハ同様、黒っぽい色をしていますが、終齢幼虫(幼虫の最終形状)になると黄緑色になります。終齢幼虫は近いうちに蛹になります。
※ミカン科の樹木にくるアゲハの仲間は、何種類かいます。このサイトでは、遭遇の可能性が高い普通のアゲハ(ナミアゲハ)について説明していきます。
我が家では、レモンの木に毎年アゲハがやってきます。ミカン科の樹木は鋭いトゲがある場合が多いので、幼虫を採取する際は気を付けてください。トゲの先端を剪定ハサミでカットすることも可能です。
セリ科もミカン科もないけど、どうしても飼いたい時は?
アゲハの幼虫達は、油断すると植物を枯れさせてしまうくらい、かなりの大食感です。ですから、できれば餌となる植物(セリ科やミカン科)が家にあり、自然に任せて産卵しにきてももらうのが一番よいと思います。
その1.エサとなる植物から育てる
もし、園芸初心者で何を育てるか迷うという方は、大きめのプランター(少なくとも6号以上)で、2株以上のイタリアンパセリを苗から育ててみるのがよいかなと思います。
3月~7月頃よく苗が出回ります。早めに植え付ければ、5月前後からアゲハが飛んでくるかもしれません。
ただしどんどん産卵されてしまうと、あっという間にプランターが丸坊主に・・・。
1つのプランターに1~2匹までなどと決め、あとは雑草が多い空き地など他人に迷惑のかからない場所に逃がしてあげましょう。
セリ科の雑草はそれ程多く無さそうですが、駆除するよりは自然に任せる方が気持ちも楽だと思います。
基本は家の中で観察しながら飼育するのがお薦めですが、家に取り込みたくない場合には、プランターごと虫よけカバーで覆うとよいでしょう。
再びに産卵されることや、アゲハチョウに寄生する虫を予防することにもつながります。
虫よけカバー詳細(楽天)>>
また、アゲハチョウは蛹になる直前、最適な場所を求めてかなりアクティブに移動します。気が付いたら意外な場所で蛹になっていたということもありますのでご注意くださいね。
その2.飼育キットを購入する
楽天でアゲハの卵と食草がセットになったキットが販売されていました。
お値段は高いです・・・・・・。でも忙しい方や、どうしても自由研究をしてみたいという方にはよいかもしれません。
気になる方は下記リンクより詳細を見てくださいね。
(※現時点での情報です。万が一リンクが切れていたら申し訳ありません。)
生態について
産卵と羽化のサイクル
アゲハチョウの産卵は、一か所に数個産み付けては他の場所に移動してまた数個産みつけるというように、飛び回りながら産卵を繰り返します。
例えば我が家のレモンの木では、毎回3~4匹程の幼虫しか見かけません。(少ない年と多い年があるので、天敵に捕食されている可能性もあります。)
産卵時期は、年に4回です。
アゲハチョウが卵から成虫になるまでは、1カ月半~2カ月。
成虫の寿命が2週間~1カ月。
年間4回程度、世代交代をしながら子孫を残していきます。
①4~5月頃産卵 ⇒ 5月~6月頃羽化
②6月頃産卵 ⇒ 8月頃羽化
③8月産卵 ⇒ 9月頃羽化
④9月頃産卵 ⇒ 10月頃の蛹は越冬して春に羽化する。
実際に育てるとわかりますが、成長がとても早いです。短い一生の中で懸命に子孫を繋ぐ姿は、とても健気で虫が苦手な私ですら愛おしさを感じます。
卵~終齢幼虫 ※アゲハ(ナミアゲハ)の写真で解説
①卵は1mm程度。孵化が近づくと中が透けてきます。写真(右)は生まれたての1齢幼虫で卵の殻は自分で食べます。
②1度目の脱皮をすると2齢幼虫、2度目の脱皮をすると3齢幼虫になります。
③3度目の脱皮をすると4齢幼虫、4度目の脱皮をすると5齢(終齢)幼虫になります。稀に6齢幼虫になることもあります。
前蛹~羽化 ※アゲハ(ナミアゲハ)の写真で解説
④口から糸を出して体を固定し、前蛹(ぜんよう)になります。
⑤前蛹になってから1~2日で蛹へと脱皮します。
⑥蛹になってから7~10日程で羽化します。羽が伸びるまでじっとしています。
飼育する前に知っておけば安心~トラブル編
飼育中によくあるトラブルや疑問についてまとめてみます。
その1.餌不足
ミカン科の樹木を地植えしている場合には、あまり餌が不足することはないと思います。
しかしプランター栽培や、地植えでもパセリなどの草類で飼育している場合には、餌が不足することがよくあります。なぜならばアゲハの幼虫達はとても食いしん坊なのです。
初めから飼う幼虫の数を1~2匹程度にするなど、餌不足にはご注意くださいね。
例えばイタリアンパセリを地植えしていた時、1匹で1株が丸坊主(茎のみ)になってしまったことがあります。地植えの場合、餌が無くなると幼虫達は餌を求めていつの間にか居なくなります。
かと言って、スーパーでパセリなどの食草を買うと、農薬により幼虫が死んでしますことが多いそうです。無農薬のもの以外は与えない方がよいでしょう。
どうしても不足してお困りの場合には、インターネットで無農薬のパセリ苗などを購入するのも一つの手段です。ただし完全になくなる前に早めに注文する必要があります。
ミカン科の樹木でアゲハ(ナミアゲハ)を飼育している方は、楽天などでアゲハ草というミカン科の植物の販売もあるようです。
その2.幼虫を脅かす寄生虫
昆虫が苦手な方にとっては、背筋がぞっとしてしまう話ですよね。でも、これが自然の摂理。苦手な方もおられると思いますので、このサイトでは詳しい説明や画像は掲載しないでおきます。
幼虫や蛹の一部分に黒い斑点が出るなど、何か異常があれば寄生されている場合が多いです。主には蛹(さなぎ)を破って寄生昆虫だけが出てきます。
なかなか羽化せず寄生昆虫だけが出てきてから初めて気が付くケースが多いかと思います。私はまだ経験がありませんが、それなりの頻度で発生するようです。虫が苦手な方は、心の準備が必要かもしれません・・・・・・。
主な寄生昆虫:アゲハヒメバチ・アオムシコバチ・ハエのウジ等。
その3.終齢幼虫の下痢&蛹になる場所
普段はコロコロした黒~深緑の糞をするのですが、終齢幼虫(幼虫の最終段階)が水っぽい下痢のような糞をしたら、それは蛹つくりが始まるサインです。体内の余分な水分を排泄しています。
この時注意しておくことは、幼虫が蛹をつくる場所を求めて、かなりアクティブに動きまわることです。
うちで飼育した時は、確定までに数時間かかっています。ですので、幼虫がどこかに居なくならないようにご注意ください。割と足が速いです・・・・・・。
あと、例えばプラスチックの飼育ケースに入れている場合には、ふたのスリットで蛹になるか、側面で蛹になるかの二択ですよね。
もしも側面がつるつるしたプラスチックの場合には、蛹を作る場所としてあまり適していません。(羽化したチョウが滑ってしまうかもしれない為。)
蛹になるのに最適な場所を作ってあげましょう。事前に作っておくと慌てずに済みますよ。
段ボール板を貼るなど色々なやり方があると思いますが、いつも私が行う方法をご紹介しますね。
牛乳パックの底を図のように切り取って、内側に割りばしや木の枝など木の棒をテープで固定します。木の棒は2本くらいあると、上に被せるネットが安定しやすいです。
テープを隠すように、ティッシュなど柔らかいものを敷き詰めてから、一番上にキッチンペーパーをたたんで乗せます。
上から三角コーナーネットを被せて、牛乳パックの位置で輪ゴム止めすれば完成です。不織布タイプも使えますが中が見にくいので、今年はネットタイプを使いました。
中に幼虫を入れれば、かなり入念に移動を繰り返す様子が観察できます。命に直結するので場所選びにはこだわってるのでしょうね。ネットの穴にしっかり足を引っかけて移動する姿は結構かわいいですよ。
あとは前蛹(ぜんよう)になるのをこのまま待ちます。
少し倒れやすいので、ひと回り大きい深めの箱やタッパーに入れたり、牛乳パックの底に重りを入れたり、安全な場所に移動して観察しましょう。
その4.前蛹(ぜんよう)落下
前蛹とは蛹になる一歩手前の状態です。終齢幼虫は、蛹になる場所を決めるとその場所に糸をかけて自分の体を固定します。
通常は前蛹の状態で落ちることは少ないのですが、ぶつかってしまうなど何らかのトラブルがあると、糸が切れて下に落ちてしますことがあります。
落ちてしまった場合には、容器にティッシュを何枚かふわっと敷き詰め、静かに寝かせておいてあげましょう。運が良ければ自力で脱皮して蛹になります。
もし可能であれば、幼虫が前蛹に変化し始めたら、下に何か柔らかいものを敷いたりしてあげると、落ちた時の衝撃で損傷を受ける可能性が低くなります。
無事に脱皮が終わり蛹になることができたら、蛹ポケットなどを作っていれてあげましょう。(作り方は次項で解説します。)
その5.蛹(さなぎ)落下
それなりの頻度で起こるのが、蛹の落下です。私も今年初めて経験しました。
写真のように、脱皮中に自分が作った命綱の帯糸から抜けて落下してしまいました。高い位置からの落下ではなかった為、体に損傷はなく無事でした。
下に柔らかいものが敷いてあると安心ですね。そういう意味でも、前述した牛乳パックのケースはおすすめです。
蛹を移動したい場合には体を傷つけないように、糸だけ切ってください。自信がない方は移動しない方がよさそうです。
セロテープによる蛹の固定はやめておいた方が良いと思います。
落ちてしまった場合には、いくつか方法があります。
- 蛹ポケットをつくる。
- 柔らかいティッシュなどを何層かに重ねて、そっと上にそっと置いておく。
私は試したことがありませんので、蛹の向きなどは他のサイトを検索してみてください。
- 段ボールや木の棒に木工用ボンドなどで接着する。(注)
接着方法を知りたい方は、私は試したことがありませんので、他のサイトを検索してみてください。
注)木工用ボンドは水に溶けますので雨が当たる場所での使用はできません。
注)木工用ボンドは背中側に付けるとアゲハチョウが出て来られなくなる可能性があります。
などです。
今回は、一番確実そうな1の蛹ポケットのつくり方をご紹介しますね。
紙で円錐を作ってセロテープで固定します。深すぎると羽化できませんので、成虫の出口は塞がないように気を付けてください。蛹はピクピク動くことがありますので、浅すぎると落ちることがあります。いくつか試作してみたところ、写真の形に辿り着きました。
写真のような向きで蛹をポケットに入れてあげましょう。入れる向きに気をつけてくださいね。
前蛹から脱皮して1~2日は動いたり色が変化しましたので、今回は暫く柔らかいティッシュなどに横向きに置いておきました。完全に蛹になった後は蛹ポケットに入れます。
※蛹の色は環境によって様々です。今回はたまたま濃い茶褐色になりました。例年はもう少し薄い色です。
その6.雨の日の羽化
羽が完全に伸びていれば、鱗粉(りんぷん)の防水効果で、ある程度の雨をしのぐことができます。しかし大雨や強風の時は、飛び立たせることができない場合があります。
うちでは今までに三回、雨の日に羽化したことがあります。
ある時は小雨で問題なく飛び立ち、またある時は雨が強く水たまりに落ちてしまい、外のあじさいの葉の裏に手で移動させて自然に任せました。
そして今年は、家の外壁で休んでいる時に雨がひどくなり飛べなくなってしまいました。網で捕獲して家に避難させて、翌朝外に放しました。
自然の力に任せるのか、家で天候回復を待つかの選択は難しいのですが、もし家で天候回復を待つ場合には以下のことに注意してください。
【注意1】
部屋が明るいと羽を羽ばたかせて飛ぼうとするので、体力を消耗してしまいます。暗くしてあげましょう。
【注意2】
飼育ケースの壁面を登れる構造にしてあげてください。蝶は壁面やふたにぶら下がって羽を休めようとします。まだ上手に飛べない場合には、ふたまで登れずに暴れてしまうことがあります。
写真はプラケースのふたにキッチンペーパーを挟んだ状態です。
【注意3】
丸一日くらいであれば問題ないと思いますが、なかなか外に出せない時には餌付けが必要となる場合があります。やり方は、次項その7を参照してください。
難しくてできない時は、なるべく体力を消耗させないようにしてあげてください。
その7.羽化の失敗
蛹の落下による損傷など、何らかの理由で羽がいつまでたっても伸びずに飛べない個体がいます。そのまま自然界に出せば、すぐに捕食されてしまいます。もし可能であれば餌付けをして家で飼ってあげるとよいでしょう。
ただし、難しいのはただ与えても自ら飲みに来てくれないことです。
素手で触れられない方は園芸用の手袋などを使って頑張ってみてください。
餌は、スポーツドリンク(原液)や砂糖水をあげる方もいますが、私が試した時にはあまり飲んでくれなかったので、水で10倍に薄めたハチミツがおすすめです。
ペットボトルキャップに脱脂綿を入れて、ひたひたするくらいハチミツ水をしみ込ませてください。
通常は、蝶の頭部先端に付いた口吻と呼ばれるくるっと巻いた部分をつまようじ等で伸ばして餌まで誘導します。でも虫が苦手な方には、かなりのハードルの高さですよね・・・・・・。
無理なら口元まで餌を運ぶだけ、何とか頑張ってみてください。蝶は紫外線で花を見分けていますので、餌の存在がわからないのだと思います。運が良ければ近づけるだけで飲み始めることもあるようですよ。
因みに、虫が苦手な私は次の写真のようにしました。
【虫が苦手な方の餌やり方法】
プラスチック製のピックに垂れるか垂れないか位の量のハチミツ水をつけて、蝶の口吻の輪の中にそっと入れます。少しずつ巻いてある口吻をのばしてあげると、空腹であればピックをなめ始めます。
口吻をムチのように動かしてピックをなめていれば飲んでいる証拠です。おとなしい時を見計らって、頑張って与えてみてください。
今回は5~6回繰り返したらお腹がいっぱいになったようで、横歩きでピックから離れていきました。そんなに飲む量は多くないようです。1日一回は餌やりをしましょう。
その8.越冬蛹について
越冬するかしないかは、日照時間や気温に関係があると言われています。9月以降に産まれた幼虫は越冬する可能性があります。
越冬蛹になった場合には、春(3月以降)に羽化します。しかし外気の十分な寒さにあてないと越冬せずに寒い時期に羽化してしますことがあります。越冬するかどうか素人が見分けるのは難しいです。
中には羽化しないよう冷蔵庫で保管する方もいると聞きますが、現実的には難しいですよね。
もし、どうしても越冬蛹を育ててみたい場合には、屋外の気温の上がりにくい場所で春を待つようにしてください。
プラスチックの飼育ケースなど水の抜けない容器を屋外に置いておくと、雨が当たった時に蛹が水没してしまう可能性がありますので、雨が当たらない場所に置くと安心です。
寒い時期に羽化してしまう可能性がゼロではないので、蛹の存在を忘れないよう状態を定期的に確認しましょう。
飼育方法・コツ
【卵~終齢幼虫】
- 新鮮な食草を用意してあげましょう。プラスチックの飼育ケースなどで育てる場合には、餌となる葉を枝や茎ごと取ってきて、水を染み込ませた脱脂綿を巻いてアルミホイルで巻くと便利です。
横に倒して入れても大丈夫ですが、水が漏れ出して容器がびちょびちょにならないようい気を付けてください。(糞の掃除がしにくくなるため。)
- 多めの脱脂綿にぽたぽた垂れるくらい水をしみこませると、葉がしおれにくいです。
- 葉に含まれる水分だけで足りるので、霧吹きでの水やりは不要です。
- 幼虫をつかむなどの刺激を与えると、頭から肉角という臭いのする突起物を出します。精一杯の威嚇ですので、あまり怖がらないでくださいね。すぐに引っ込みますので。
- 大きくなると糞も増えるので、こまめに捨てましょう。コロコロした糞なので、容器を傾けて落とせば簡単に掃除ができます。
- アゲハ(ナミアゲハ)の場合、幼虫が小さいうちは柔らかい葉(ミカン科の葉)を好みます。あまり固いと食べない可能性がありますので、食べない場合には先端の柔らかめの葉を与えてみてください。
- 脱皮する直前は餌を食べずに殆ど動かなくなります。また、頭を少しだけ持ち上げたような形になります。こうなったら脱皮が近い合図ですので、触らないでそっとしておいてください。
体の一部を葉に固定して脱皮するようで、落ちると脱皮に失敗することがあるそうです。脱皮後は脱いだ殻を食べてしまいます。
前蛹~羽化
- 幼虫が水っぽい糞をした後、餌を食べずに動き回っていたら、前蛹(ぜんよう)になる合図です。余力があれば、『飼育する前に知っておけば安心~トラブル編』の章のその3を参照して、最適な場所を用意してあげてください。
羽化直後はまだ飛べませんので、つかまる場所が必要です。
- 特に前蛹になる時、糸による体の固定がとても重要です。静かに見守ってあげましょう。
- 前蛹や蛹(さなぎ)の時期は特に何もしなくて大丈夫です。
- 朝明るくなると羽化することが多いです。我が家では、今まで殆ど起床前に羽化しています。今年は雨で暗かったせいか、例年より遅めで7時前に羽化しました。
- 羽化が近づくと、蛹から中身の模様が透けて見えてくることが多いです。もしそのような時は、当日中か翌日羽化する可能性が高いです。
- 羽化直後は水分調節でおしっこをすることがあります。
- 羽化した直後は羽が伸びていませんので、そっと見守りましょう。羽が伸びて自分で羽ばたくようになったら外に逃がしてあげましょう。
あまりに悪天候な場合には『飼育する前に知っておけば安心~トラブル編』その6を参照してください。
自由研究について
夏休み中に観察を終えたい場合には、『生態について』の章の、産卵と羽化のサイクルを参照してください。1度のみの観察でもよいですし、何世代も観察して徐々に考察を深めてから発表することもできますよね。
例えば、寄生昆虫に寄生されて成虫になれなかった場合には、寄生昆虫についての自由研究もできると思います。「失敗は成功のもと」ですね。
我が家では今年、こんな失敗がありました。
【失敗から学んだエピソード】
雨の日に、まだ完全に飛べない成虫を外に逃がしため動けなくなってしまいました。網で保護して再び家に入れましたが、そのせいかスワローテイル(ツバメの尾)とも言われるアゲハの羽の先端が切れしまいました。
天候が回復し翌朝外に逃がした後、飼育ケースに落ちていた羽の一片に気が付いた次第です。
かわいそうなことをしましたが、残していった羽の鱗粉(りんぷん)を観察することにしました。
これは、虫眼鏡(百均ダイソーの拡大率3倍ミニルーペ)にスマホをあてて撮影した後に、スマホで画像を拡大した画像です。アゲハチョウの羽の表面がふわふわした毛のように見えました。
更にこの後、ハンディ顕微鏡(レイメイ藤井 顕微鏡 ハンディ顕微鏡DX)にスマホをあてて倍率200~250倍で観察しました。こんな感じです。
鱗粉の形状がよくわかりました。
顕微鏡なら、手に付いた鱗粉をセロテープなどで採取すれば観察できるかもしれません。鱗粉の他にも前蛹から蛹に脱皮した時の抜け殻も観察しました。
他には、水を垂らして羽が濡れないかの観察もしましたよ。一瞬で水をはじくので撮影はできませんでした。
ハンディ顕微鏡は、私の近所では大型の文具店でも販売されていました。ネットでの販売もあり、一つあると何かと重宝します。
うまくいかなかったという結果でも、なぜうまくいかなかったかをよく考察して、自分だけの自由研究にしてみてくださいね!
まとめ
まだまだ私の知らないアゲハチョウの世界があると思いますが、今知っていることをできるだけ詳しくお伝えしました。新たな情報がありましたら、随時追記していこうと思います。
もしも自然に任せて飼育するというのであれば、幼虫に餌さえ与えるだけですので、プラスチックの飼育ケース一つで子どもでも簡単に育てられると思います。
一方で、自然の法則から離れて人の手により飼育したのだから、最後まで出来る限りのことはしてあげようと考えるのであれば、人間が手を貸す場面が増えてくると思います。
あまり難しく考えずに、まず育ててみるのがよいかもしれません。
世話をたまにしかしない息子が、「来年も飼うぞ~!!」とやる気満々で言っています。恐る恐るお世話をしていた母は、気が付けば愛着が湧いてちょっとしたアゲハロスに・・・。
昆虫が苦手な私にまさかこんな日が来るとは、子育てって本当に不思議だなと思います。
親子でこんな会話が増えています。
「まだアゲハくん生きてるかな?」、「雨で大丈夫かな?」と。
短いアゲハの命は、優しい心を子どもの心に芽生えさせてくれました。機会があれば、皆さんも是非挑戦してください!