『尿素』とは、人間の体内から排出される成分ですが、二酸化炭素とアンモニアから合成される化学製品でもあります。
例えば、尿素の保湿効果を利用した”尿素20%配合”というようなハンドクリームを見かけたことがあるのではないでしょうか。
また、尿素に純水を加えた尿素水は、ディーゼルエンジンに含まれる排ガスを水と窒素に分解し無害化する目的でも使用されていますので、意外と身近なところで活躍している物質でもあります。
この『尿素』を使って結晶を作る方法や、結晶を作る際の注意点、結晶の保存方法などを詳しくお伝えしていきます。
実験の所要時間は、2~3日。すぐできて簡単です!
今回は、より簡単に実験を行うため、自由研究キットを使用しました。
尿素自体は薬局で簡単に手に入りますので、余裕のある方は作り方の章を参考にして一から結晶作りを楽しんでみてください。
尿素結晶~準備するもの・材料
材料及びその他に準備するものは、
- 尿素
- 受け皿
- ろ紙やモール(結晶の土台)
- スポイト(あると便利だが無くてもOK)
- 割りばし(かき混ぜるための棒)
- 洗濯のり(成分がPVAのもの)
※今回は主成分PVA(PVAL)の工作用液体のりを使用しました。 - ホチキス
- 蛍光ペンや水性ペン(着色したい場合のみ)
- ぬるま湯(お風呂のお湯くらいの温度)
- 中性洗剤
- 尿素を溶かすための容器
- 計量カップ
今回は、自由研究用の結晶作りキットを使用しました。
※1~4の材料・器具はキットの中に入っています。
尿素結晶~作り方
1.土台を作る
土台には、モールやろ紙を使います。尿素の結晶は白色です。着色したい方は、必要に応じて蛍光ペンや水性ペンで着色しておきましょう。
モールを図のように組み立てたり、
ろ紙を図のように組み立てます。
ろ紙の土台は、コーヒーフィルターを使うこともできます。
ただし濡れると破れやすいので、コーヒーフィルターを使う場合には、二重にした方が良いと思います。
2.尿素を溶かす
50mlのぬるま湯(お風呂くらいの温度)に尿素20gを入れ、よくかき混ぜて完全に溶かします。
その後、PVA系のりと、中性洗剤1滴を添加してさらにかき混ぜます。
(PVA系のりは、洗濯のりなら3滴程度。今回は少量の工作用液体のりで代用しました。)
★自由研究のヒント★
尿素が溶け始めた時の水溶液の温度を、容器に触れて確かめてみてね!
瞬間冷却材についても調べてみると面白いよ!
3.受け皿に尿素の水溶液を入れる
受け皿に1で作った土台を立てて、尿素の水溶液を3mm程度入れます。
乾燥した場所で、なるべく動かさないように注意して観察しましょう!
4.少し経ったら、水溶液の浸透具合をチェックする
ろ紙やモールの土台には、みるみるうちに尿素水溶液が浸透します。
私は、1時間くらい経過したら、浸透具合をチェックしました。
例えば、ろ紙の先端やモールの先端まで尿素水溶液が浸透していないようであれば、スポイトなどで尿素水溶液をかけ、土台全体にまんべんなく浸透するようにしてあげると綺麗な結晶ができます。
夏休みの自由研究にも!~尿素結晶&失敗例などの紹介
今回私が使用した尿素の結晶作りキットの中には、自由研究用の『まとめ方実例レポート』が付属されていました。考察を書く時に参考になります。
尿素の結晶は実験の考察がメインの自由研究です。
なぜならば尿素の結晶は崩れやすいので、自由研究として学校等に結晶を提出するのが難しいからです。
私が何種類か尿素の結晶作ってみて気付いた『失敗点』や『考察』なども記載しておきますので、自由研究の参考にしてみてください。
★自由研究のヒント★
排ガス処理に尿素がどのように活用されているのか調べてみるのもお薦めです。
尿素結晶~完成品
1~2時間後から、徐々に尿素の結晶ができ始めました。
2、3日で完成します。
コーヒーフィルターでも試したところ・・・
コーヒーフィルターは、キット付属のろ紙と比べて破れやすいかったのですが、尿素の結晶は綺麗にできました。
(コーヒーフィルターは薄くて破れやすいので、二重にして使うのがお薦めです。)
キットの中に入っている透明の受け皿を使うと、他にもいくつか結晶が観察ができますよ。
表面と裏面で結晶の様子が違うので、是非裏面も観察してみてください!
尿素結晶~考察・失敗例など
◆乾燥の仕方について
- 結晶が先端からでき始めたこと
- モールの方が早く結晶ができ始めたこと
この2点から、尿素の結晶は水分が蒸発しやすい環境の方ができやすいと思いました。
- 乾燥を促すため、受け皿は土台が隠れない浅めのものを使う。
- 結晶があまりできない時は、弱い風を当てる。
(但し、扇風機などの強い風や、移動による衝撃で結晶が壊れやすかったので注意。) - ろ紙の場合、土台上部の切り込みを多くするなどして、乾燥しやすくする。
(但し、切り込みが多すぎると、ろ紙が破れたり変形するので注意。) - ろ紙に尿素の水溶液を浸透させすぎると、せっかくできた結晶が水分でもろくなり落下することがあるので注意する。
(尿素の結晶は水分にとても弱いため。)
◆着色について
尿素水溶液が土台に浸透してくると、水分によりインクが溶け出てしまい、想定よりも結晶の色が薄くなってしまいました。
例えば、先端のみ少し着色したツリーの土台は、こんな感じに。
(ツリーの作り方はキット説明書に書かれています。)
このことから、土台を着色する時には、
まんべんなく色を塗った方が、綺麗な色の結晶ができます。
ろ紙であれば、裏と表の両面着色すると、より発色が良くなりますよ。
◆尿素水溶液の追加について
例えば、試しに作ってみ らせん状のモールツリー(下図)は、モールが長いので先端まで尿素水溶液が十分に浸透しませんでした。
このような時、受け皿に尿素水溶液を足しても下にばかり結晶ができてしまいますし、水分が多すぎて結晶が崩れやすいです。
特に結晶ができ始めた数時間は乾燥が進んでいないので、結晶がもろかったです。
かと言って、結晶が乾燥し始めてから水溶液を足しても、結晶はあまり成長しませんでした。
このことから、
尿素水溶液の土台への浸透が悪い時には、乾燥する前にスポイトなどで少量ずつ慎重に水溶液をかけてあげるのが良いと感じました。
尿素結晶~注意点・保存方法など
尿素は比較的危険性の少ない薬品ですが、何点か注意点があります。
詳しくまとめておきますので、ご参照ください。
また、意外と困る問題が、『作った尿素の結晶はどのように保存するのか?』という点です。
尿素の結晶は塩やミョウバンの結晶と違い、もろくて崩れやすいのです。
綺麗な結晶ができたら、せっかくなので綺麗なまま保存しておきたいですよね。
そこで、結晶の保存方法についても、いくつか実例をあげておきたいと思います。
注意点
◆目や口
目や口に尿素が入らないように注意しましょう。
尿素を触った後の手で目をこすることも避けましょう。
今回は、それ程神経質にならなくても、素手で実験できました。
万が一目に入った場合には、大量の流水で念入りにすすぎ、違和感があれば医療機関を受診しましょう。
◆加熱
加熱は避けましょう。
ぬるま湯を作るのがが面倒だから、尿素水をレンジにかけるなどということも念のためやめましょう。
尿素水溶液は、加熱するとアンモニアや二酸化炭素を発生する可能性があります。
◆塩素系漂白剤や強い酸性洗剤など
強酸化剤や次亜塩素酸ナトリウム(ソーダ)などと反応すると、有毒物が発生する可能性があります。
家庭においては、塩素系漂白剤やトイレ用の強い酸性洗剤などと触れ合わないように注意した方がよいでしょう。
◆捨て方について
キットには、自治体のルールに従って破棄という説明が書かれています。
とは言え、少量の水溶液の処理を自治体に問い合わせる方は恐らく少ないでしょう。
私は、残った水溶液が少量だったので流しに捨てました。
(塩素系漂白剤や強い酸性洗剤と接触しないようご注意ください。)
また、残った粉末や結晶に関しては、不燃物か可燃物か判断に迷うところかもしれません。
大量に余った場合には、念のため確認することをお薦めします。
危険性は低いとは言え、何らかの物質と反応してしまう可能性もある薬品です。
もし少量をゴミとして捨てる時には、念のためビニールなどで密閉して捨てるのが良いと思います。
結晶の保存方法
直射日光と湿気を避けて保存しましょう。
例えば我が家では、
受け皿がない時は、ろ紙の土台を少量のボンドで直に接着しました。(上図の左側)
受け皿がある時は、受け皿ごとボンドで接着します。(上図の右側)
また、キットに入っていた透明の受け皿で作った結晶は、次のようにしました。
結晶の標本のようなものができますよ!
尿素の結晶づくりは、簡単ですぐに楽しめる実験です。自由研究以外でも是非楽しんでみてください。