『古典』は難しい。 わからないから つまらない。
そう感じていた小学生の我が子も、今では絵本やマンガを音読しながら楽しく暗唱するようになりました。
古典には、意味がわからなくても、意外と暗唱できてしまう不思議な魅力があります。
その理由を考えてみました。
それはきっと、
- リズムを楽しむ。
- 絵でイメージを膨らませる。
- 歴史や人物に興味を持つ。
- 昔も今も変わらない共通の心(感じ方)を探してみる。
など、子供が自分なりの楽しみ方を見つけるからだと感じました。
例えば我が子は、”リズム”と”俳句や短歌の掛詞(かけことば)”が大好きです。
我が家に10冊ほどある古典関連の絵本やマンガのうち、小学生(低学年)の息子が特に気に入って暗唱音読をしているお薦めの本をご紹介いたします。
小学生(低学年から)楽しめる本を選びました。
歴史の豆情報など楽しみ方のコツも記載していますので、良かったら参考にしてみてください。
親の私も知れば知る程、古典が好きになりました。子供だけではなく、大人の方も楽しんでもらえたら嬉しいです。
我が家での暗唱音読の方法
1.最初は追い読みから
始めは古典の言い回しに慣れていないので、大人が読んだ後、同じ所を子供に読んでもらう追い読みをしています。
例えば、句読点ごとなど、短く区切って3回程度追い読みを繰り返します。
2.少し慣れたら一緒に音読する
追い読みに慣れてきたら、大人と子供が一緒に声を出して音読します。
3.暗唱音読にもチャレンジ!
最後は、文字を見ないで暗唱音読します。
小学生(低学年)の息子の場合には、同じ場所でつっかえることが多いです。苦手な所は一緒に読んであげながら、子供のペースで楽しむようにしています。
小学生・低学年から楽しめるお薦め古典本
◆祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)
鎌倉時代に、琵琶という楽器の音と共に口述で語られた平家物語。この冒頭文「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)」の絵本です。
この絵本は、NHKのEテレ「にほんごであそぼ」総合指導や、作文通信教育講座の監修も手掛ける齋藤孝先生の”こえにだすことばえほん”のシリーズです。
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。」で始まる文章は、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
読み始めた時は「何これ?」と言っていた息子も、「自分で読みたいから、お母さんは黙っていてね。」と得意気に音読をし始め、すぐに暗唱できるようになってしまいました。
とにかく”リズムがよい”のが特徴です。
おごれる人も久しからず・・・
この意味を、未来を生きる子供達にも真剣に考えてもらいたいと思いました。
『祇園精舎』の楽しみ方を2例ご紹介します。
その1【日本の歴史を調べてみる】
「この人は誰?何をした人?」と絵本の中に出てくる人物や歴史に子供が興味を持っていたので、学習マンガで日本の歴史についても学びながら読みました。
我が家では、角川まんが学習シリーズが読みやすくて重宝しています。
例【祇園精舎の絵本に出てくる人物や歴史について】
●承平の将門・天慶の純友
平安時代前期の学習マンガ(Amazon)>>
●康和の義親・平治の信頼
平安時代後期の学習マンガ(Amazon)>>
●平家の台頭・繁栄・滅亡の歴史
平安時代後期の学習マンガ(Amazon)>>
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その2【祇園精舎以外も調べてみる】
源平合戦の中で、悲しくも美しい話として人気のある『一の谷の戦い』。平家方の若い美少年・平敦盛と源氏方の熊谷直実について調べてみてはいかがでしょうか。特に中高生や大人の方にお薦めです。
戦いの虚しさや武士の悲哀を感じ、鎌倉時代に武士の間で禅宗が広がっていった意味も分かるような気がしました。
◆おくのほそ道
江戸時代の前半に、松尾芭蕉が弟子一人を伴い、江戸から東北・北陸を通り岐阜県の大垣まで旅をしながら詠んだ俳句(14句)と序文がおさめられた絵本です。
この絵本は、NHKのEテレ「にほんごであそぼ」総合指導や、作文通信教育講座の監修も手掛ける齋藤孝先生の”こえにだすことばえほん”のシリーズです。
一句につき見開き1ページの絵があるので、俳句に詠まれた情景を子供が理解しやすいと思います。
芭蕉が歩いた道のりの地図もあり、どの場所でどの句を詠んだのかもわかるようになっています。
小学生(低学年)の息子の楽しみ方は、ちょっと変わっています。
「全てのページにある動物がいるんだよ。」と教えてくれました。そんな楽しみ方もあるとは!?
もう一つ大好きなのが、掛詞(かけことば)。
二見(ふたみ)という地名と、ふたみ(貝のふたと身)という言葉を掛けたところも、教えてあげると「だじゃれなんかい!?」と喜んでいました・・・。
『おくのほそ道』の楽しみ方を2例ご紹介します。
その1【歴史の舞台・奥州平泉について】
平安時代~鎌倉時代の始めまで、源頼朝も恐れるほどの力を持った奥州藤原氏。
この絵本の中にも奥州平泉で詠んだ句が2句入っています。例えばこの一句。
夏草や 兵どもが 夢の跡
平泉と言えば、源義経が兄頼朝の差し向けた追手から逃れるため、奥州藤原氏を頼って辿り着いた地であり、最期を迎えた地でもあります。
奥州藤原氏がいかにして繁栄し、どのような願いから金色堂を建立したのか。そしてなぜ滅びたのかをという歴史の流れを知っていると、俳句を詠んだ芭蕉の気持ちに少し近づける気がします。
●奥州藤原氏・金色堂などについて
この時代の歴史学習マンガ(Amazon)>>
●奥州藤原氏・滅亡について
この時代の歴史学習マンガ(Amazon)>>
その2【芭蕉の生涯について】
江戸時代の平均寿命を調べてみると、今よりだいぶ短いことがわかると思います。
芭蕉がこの旅に出た年齢や、旅に対する思いを知ると、奥の細道の俳句をより深く鑑賞できる気がします。
【序文】
・・・ 日々旅にして、旅を栖とす。
や、
【旅の最後の句】
蛤のふたみにわかれ行秋ぞ
旅を終えて尚、伊勢の二見浦に旅立つ芭蕉を、涙ながらに見送る親しい人々の姿を絵本で見てください。そして芭蕉はこの後どのような生涯を送ったのか調べてみてはいかがでしょうか。
芭蕉の旅にかける思いが、子供にも伝わると嬉しいですね。
◆春はあけぼの
平安時代、宮中で中宮(天皇の后)に仕えた清少納言。
彼女が宮中での日々などを綴った随筆『枕草子』の第一段目の有名な文章が、『春はあけぼの』です。
子供の頃、暗唱した方も多いのではないでしょうか。
この絵本は、NHKのEテレ「にほんごであそぼ」総合指導や、作文通信教育講座の監修も手掛ける齋藤孝先生の”こえにだすことばえほん”のシリーズです。
絵や色使いがとてもかわいいので、小学生から楽しめると思います。
『春はあけぼの』が有名なのは、現代の私達も
”それ、わかるなあ。”、”それ、素敵だよね。”
とわかるような、日本ならではの四季の美やそれを楽しむ感性に触れ、そこにとても共感できるからだと感じました。
きっと小学生(低学年から)でもわかると思います。
そして、”リズムがよい”ので、音読していて楽しいですし、とても暗唱しやすいです。
小学生(低学年)の息子は、最後の『わろし』という言葉の響きが大好きなので、『わろし』だけ殊更に強調して読んでいました。
『春はあけぼの』の楽しみ方を一例をご紹介します。
【他の段も読むと、貴族の暮らしなど発見がたくさん!】
随筆とは、エッセーみたいなものなのです。
だから、堅苦しく読むのではなく、きっと平安時代の人々も気軽に楽しむ文学だったはずですよね。しかも、宮中での生活を描いていると言われています。
しかし、『春はあけぼの』で描かれるような四季の風景は、貴族でなくても宮中でなくても感じられるものではないかなと疑問に感じませんか。
『枕草子』は、実は他の段も読むと、とても面白いです!!
第一段の『春はあけぼの』は、およそ300段もある枕草子の中のほんの一つの章段なのです。
そして他の段が、大人の方にもお薦めしたいほど面白かったので、感想を書いてみます。
私が読んだ『なりきり訳 枕草子 平安の衣食住を知れば古典がわかる』という本は、口語訳で書かれているので、すらすら読めます。
まずは大人が読んでみて、気になるところを子供に教えてあげると良いのではないでしょうか。
本の詳細はこちら(Amazon)>>
私の感想は、”平安時代の人も現代の人とあまり変わらないなあ。”です。
ちょっとした衝撃を受けました。”噂話はやめられない”とかね・・・。
すぐそこにいる誰かのように、当時の人々をとても身近に感じられてお薦めです。
きっと当時の人々の心を知る手がかりになると思いますよ。
歴史の流れの中で、宮中を去ることになった清少納言。
女性の本音を赤裸々に語りながらも、辛かった思い出は殆ど書かいていないところに、彼女の粋を感じました。
◆百人一首
百人一首を、遊びとして楽しみながら覚えるのも、かなりお薦めです。
我が家では、学校に行く前の朝の10分程度、百人一首で遊ぶのがルーティーン化しています!
詳しい内容は、下記の関連記事を参考になさってください。
◆論語
論語は、今からおよそ2500年前、中国の孔子という思想家と、その弟子とのやりとりの言葉をまとめたものです。
我が家では、『ドラえもん』が、まず息子の心をとらえました。
(マンガのない論語の本も持っていますが、そちらの本は興味を持てなかったようです。)
特に小学生・低学年のお子様の場合には、キャラクターの力が大きい気がします。
2500年前とは、日本で言うと縄文時代の終わり頃です。
日本人が狩猟生活を送っていた頃の言葉が、現代に受け継がれ、今小学生の我が子にさえも影響を与えるとは。やはり孔子はすごい人ですね。
『論語について』や『孔子と弟子達について』のコラムもありますよ。
この本には、はじめに10ページ程度のドラえもんのマンガがあり、例えばのび太君のような弟子やジャイアンのような弟子が登場します。
孔子先生と弟子とのやり取りのマンガを読むだけでも、『論語とは何か』、『孔子と弟子との関係』、そして論語の中の言葉を4つも知ることができますよ!
それぞれの文章に、ストーリーのあるマンガはありませんが、イラストが豊富です。
文字は大きく、意味も書いてあり、オールカラーなので、小学生低学年からでも、とても音読しやすいと思いました。
論語が小学生にも親しまれる理由として、
まず音読していて”心地よいリズム”という点が挙げられると思います。『子曰わく、~』から始まる所も我が子は大好きです。
もう一つの理由として、人としてどうあるべきかをわかりやすく示されている点が挙げられるのではないでしょうか。
息子の行動をたしなめる時、我が家でよく使われる言葉は、こちらです。
子曰わく、己の欲せざる所は人に施すこと勿れ
親の言葉ではなく、孔子先生が言っていた言葉だよと伝えると、しぶしぶ反省する我が子です。
『論語』の楽しみ方を2例ご紹介します。
その1【孔子について】
孔子は、3000人近い弟子を持った思想家ですが、国をよくするために政治にも携わっているのです。しかし、順風満帆な人生だったかというと、必ずしもそうではなく苦労も多かったようです。
どんな人生だったのか、調べてみてはいかがでしょうか。
おすすめの本は、すごい人ほどダメだった!『失敗図鑑』です。孔子についても載っていますよ!
『失敗図鑑』については、別途記事を書いていますので興味のある方はそちらもご覧ください。
失敗図鑑に関する記事はこちら>>
どんな人生であれ、孔子の言葉には確かな説得力があります。
そんな孔子が、今の世界情勢を見たら何と言うのでしょうか?
孔子が貫いた仁(おもいやり)の言葉で、人の心が正しい方向に向かうことを願っています。
その2【論語に由来する言葉】
実は、論語に由来する言葉は、有名な本屋さんの名前や四字熟語などたくさんあるのです。
興味があれば、是非調べてみてください。
おわりに~古典を音読するとは
まずは・・・
絵本やマンガ、そしてリズムの楽しさなども味方にして、古典に興味を持つことから始めてみましょう。
扉を少し開けて、入り口からそっと古典の世界をのぞいてみてください。
次は・・・
古典に少し興味を持ち始めたら、タイムスリップした気分で、気になったことを調べてみましょう!
調べているうちに、何か自分だけの発見があるかもしれませんよ。
きっと・・・
昔の人々の心を、今を生きる私達が身近なものとして感じられた瞬間、古典の楽しさは何倍にもなる気がしました。
今と昔を比較してみたり、意外な共通点を見つける中で、『共感』や『教訓』を得られるという楽しさがあると思います。
子供達が、何か一つでも古典の中から大切な言葉や思想を見つけて、一生の宝物にしてくれることを願っています。