【科学実験×アート】かんたん!『表面張力&インク分離』~原理もわかりやすく解説!

【科学実験×アート】かんたん!『表面張力&インク分離』~原理もわかりやすく解説! 観察・実験・知的好奇心

 
ろ紙を水性ペンで着色して水をしみこませるだけで、きれいでかんたんな科学実験をすることができます。

一色が複数の色に分離する不思議さ、想像もしていなかったグラデーションが出現する驚き!
 
実は、こんなに簡単な実験の中にも、科学の不思議がいっぱいつまっています。
 

楽しみ方は色々あります!

  • 目で見て不思議を楽しむ。
  • 色を工夫したり装飾をしてアートを楽しむ。
  • 原理を理解して科学を楽しむ。
  • さらに実験を進めて自由研究として楽しむ。

 
百均でも手に入るコーヒーフィルターと水性ペンさえあれば、今すぐに試すことができる『超・かんたん科学実験』です。

この記事では、実験方法、科学の原理(表面張力など)、自由研究のアイデアなどを詳しくご紹介しています。
 

原理を実験で確かめよう!~表面張力と毛細管現象

なぜ「ろ紙」にどんどん水がしみていくのでしょうか?
それは『毛細管現象もうさいかんげんしょう』という性質によるものです。

これを理解するために、まず水面にはたらく表面張力ひょうめんちょうりょくというものについて学びましょう。
 

くわしい説明は小学生にはむずかしいので、ここでは子供にもわかりすく説明していきます。

表面張力は、ふだんの生活の中でも目にすることができますよ!

 

水の表面張力って何だろう?~水が空気と触れた時に・・・

コップいっぱいに水を注いでも、水面がもり上がってなかなかこぼれなかったという経験はないでしょうか? 
 

 

これは、水面に表面張力ひょうめんちょうりょくが働いているからなのです。

 

水は、目に見えないつぶ分子ぶんし)でできています。
この粒同士は、お互いに引きせ合うという性質せいしつ(集まろうとする性質)があります。
 
水の中では、お互いに引き寄せ合う力のバランスが保たれているので安定した状態じょうたいで存在することができます。
 

小学生にわかりやすく説明するとしたら、例えば、右に引かれるものもあれば左に引かれるものもあるので、結局打ち消し合って動かないというイメージです。綱引きで引き分けみたいな感じですね。

 
 

 
しかし、水面(空気との境界きょうかい面)の粒は水中側には引き寄せられるけれど、空気側には引き寄せてくれる水の粒がありませんね。

だから、水面ではバランスを保つことができずに、水の粒は下方向に引き寄せられます。
 
 
 
その結果、水面の粒には表面積をできるだけ小さくしようとする力が働きます。
これを表面張力ひょうめんちょうりょくといいます。


 

水滴が球状になるのも、表面積を小さくしようと表面張力がはたらいているためです。
 

 
 

 【簡単おもしろ実験!】
 

上図のようにもり上がった水面に、台所用洗剤を入れて1滴たらしてみてください!

面白いことがおきますよ!

※洗剤の中の界面活性剤には、表面張力を弱める効果があります。

 
 

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毛細管現象って何だろう?~水が固体と触れた時に・・・

実は水だけではなく、固体にも表面張力のようなものがあります。
※正確には表面自由エネルギーといいますが、この記事では固体の表面張力と呼びます。
 

だから、固体と水がれた時、固体の表面張力によって水の中のつぶ(分子)の動きに影響が出ます。
そして、水のつぶの動きが変わると水の表面形状も変わります
 

小学生にはむずかしすぎるので、子供にもでわかりやすく解説していきます!

 
固体の表面張力が大きい = 水をはじきにくい

と考えると、わかりやすくなると思います。
 

水を固体の上にたらした時のことを考えてみましょう。
 

 

水を何にたらしたかによって水滴の形状が変わることは、子供でも何となくわかるのではないでしょうか?
例)すごく水をはじく傘の表面には丸い水滴がのっています。
 
角度aが大きくなり90°をこえると、水をはじきやすいと考えることができるのです。
※角度aのことを、接触角といいます。(覚えなくてもOK!)

 

例えば、普通のガラス容器と水の場合、ものすごく水をはじくわけでもないので、aの角度は90°より小さくなるはずです。

試しにガラスコップに水を注いでみてください。
下図のように、コップの壁面側の水が斜め上にもり上がっていることを確認できると思います。
 

a<90°


  

これは、壁ぎわで水が上向きの力を受けているということなのです。
 

 
 

ここまで来ると、ようやく毛細管現象もうさいかんげんしょうの説明ができるようになります!

 

『毛細管現象』とは、液体(水)の中に細い管を立てると、管の中を液体(水)が上昇してくる現象です。
 

毛細管現象

 

ろ紙も細かい繊維せんいからできているので、細いすき間がたくさんあります。

だから、ろ紙に水がしみていく原理は、毛細管現象によるものなのです。
 

でも、なぜ細い管の中に水が入っていくのかな?

 

まず、表面張力について復習しておきましょう。

【表面張力をちょっと復習】

  • 水のつぶ(分子)はお互いに引き合い集まる性質があるので、水面の水のつぶは水の中の引寄せられる。
     水面にある水のつぶには下向きの力がはたらいている。
     
  • 水と容器がふれた時、容器のかべぎわの水には上向きの力がはたらいている。

 

細い管の中では、こんなことが起こっています。
 

 

じゃあ、なぜ細い管なの?

水は一体どこまで上昇するの?

 
管の中の水には、重さがあります。
重いものより軽いものの方がかんたんに持ち上がりますよね。

だから、水の重さも考えなくてはいけません。
太い管と細い管の中の水を同じ高さまで上昇させる時のことを考えてみましょう。
 

 

上昇する高さが同じでも、細い管の方が管内の水の体積が小さいので軽くなりますよね。

だから、細い管の中の水の方が上昇しやすいのです。
 
 

管内の水が上昇すればするほど、管内の水の重さも増えます。だから、どこまでも上昇し続けるわけではありません。
 

 

上向きと下向きの矢印がつり合った時に、水の上昇は止まります。

 

毛細管現象のかんたん科学実験~自分の目で確かめてみよう!

毛細管現象を目で見えるように実験で再現するのは、意外と難しいです・・・。

失敗した実験や、これなら子供でもできそうだなと思った実験方法などをまとめてみますので、参考になさってください。

 

×失敗例】

 

【失敗例】

①ストロー
②フィルムを丸めて自作した細い管
③ビーズ用テグスをセロテープで束ねたもの
④2枚のセロテープの間に針をはさんで、後から針を抜いたもの

 

【△確率低いがたまに成功する例】

作るのは工程はむずかしくありませんが、成功率が低いため何度も作り直しました。

(さらなる改善が必要です。)
自由研究で色々試してみたい小学生は、挑戦してみてください。

①おゆまると針金で自作

直径1mmの針金に、おゆまる(お湯で温めるとやわらかくなる樹脂)を巻いて、固まる前に針金を抜いて作りました。
※成功率はとても低いです。
 

 

【○成功例】

他にも使えるものがないか探してみてください!小学生の自由研究にも!!

もっと手軽に、毛細管現象を目で確認できる実験方法を考えました。
 

①お箸のすき間をせばめて細い管に見立てる

ちょっとコツはいりますが、子供でも実験できました。
おはしのすき間をせばめる程、すき間に入り込む水の高さが高くなります。
 

 

②歯ブラシの毛のすき間を細い管に見立てる

使い古しの歯ブラシを使用しました。毛先だけをチョンと水につければ、あら不思議!?

一瞬ですき間に水が入っていくので見ていて楽しいですよ!
テクニックいらずでお薦めです!!
 

※新品の歯ブラシではうまくいきませんでした。また、どんな商品でも成功するかは不明です。

 

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簡単!楽しい!インク分離実験~実験方法や注意点

毛細管現象の原理は、理解できたでしょうか?
 

ろ紙は細かい繊維でできていますので、顕微鏡で確認すると細いすき間が空いています。
ですから、ろ紙には水がどんどんしみていくわけです。まさにこれが毛細管現象ですよね。

今回は、ろ紙として百均でも売っているコーヒーフィルターを使用しました。
 

 

水性ペンのインクは水に溶けるので、水性ペンで色をのせたろ紙を水につけると、水性インクが水と一緒にろ紙にしみこんでいきます。

インクは、一色に見えても複数の色を混ぜて作られています。例えば、オレンジなら赤系と黄色系という感じです。
 

 
だから水性インクの中に含まれる色素のうち、水と相性のよいもの程遠くまで運ばれるのです。
このように、混ぜ合わせた物(混合物)を分離・検出する実験方法のことをクロマトグラフィーと言います。
 

【ペーパークロマトグラフィーの実験方法】

かんたん!科学実験~ペーパークロマトグラフィー(緑インク)

 
手順①

コーヒーフィルターの不要な部分を切り取り、1枚に開いておきましょう。
開いたろ紙(コーヒーフィルター)を短冊状に切り、下から1cm程度(※1)のところに水性ペンでラインを引きます。
 

※1
水につかる部分にはインクを付けないようにしましょう。インクが溶けだして水に色がついてしまいます。


手順②

器に少量の水をはり、短冊状のろ紙の下端をひたします。
 

手順③

インクがこれ以上広がらなくなったら、紙などの上に置いて乾かします。
※上図は緑色のインクを分離したものです。
 

各色を並べるとこんな感じです。
 

かんたん!科学実験・ペーパークロマトグラフィー~表面張力の原理もわかりやすく解説!
かんたん!科学実験~ペーパークロマトグラフィー

 

【ペーパークロマトグラフィーの注意点】

【実験の注意点】

  • 濡れたろ紙ではインクが広がらないので、実験前に水滴などがつかないように注意しましょう。
     
  • ろ紙に書いたインクが器の水に溶けだすと、水自体が汚れてしまいます。インクのついた部分はひたさない方がうまく実験できると思います。

 

科学をアートに!~オリジナルを考えよう

せっかくなので、実験をしながらアートもしてみました!

ろ紙の形が山に見えたので、こんなものを作りました。
 

かんたん!科学実験~ペーパークロマトグラフィー富士山アート

 

はさみや手で形を整えた後、画用紙に貼り『富士山』にしました。
雲に見立てた綿もスティックのりで貼り付けています。
 
 

続いて、焦げ茶色のインクが思いの他きれいな色になったので、『赤富士』も!
 

かんたん!科学実験~ペーパークロマトグラフィー赤富士アート

 
 

『お花』を作ることもできます!
 

かんたん!科学実験~ペーパークロマトグラフィーでお花作り

 

①ろ紙(コーヒーフィルター)を図のように切って、1枚ずつ(合計2枚)に分ける。

②ろ紙1枚を図のように四つ折りにしてから、1/4の円になるように切る。開くと円になるので、お好みの形に整える。

③1/4円を更に2等分、そして更に2等分(開いた時に16等分)に折り、折り目をつける。

④放射線状の折線の上に水性ペンで色をつける。この時円の中心付近は着色しないようにする。

⑤図のように手で持って、円の中心の着色していない部分を少しだけ水にひたす。

⑥中心から外側に水が浸透していくのを確かめる。

 

すると、このようなお花になります。
 

かんたん!科学実験!ペーパークロマトグラフィーでお花作り~表面張力の原理もわかりやすく解説!
かんたん!科学実験~ペーパークロマトグラフィーでお花アート

 

 
他にも黒いインクが夜空に見えたので、星空も作ってみました!
 

かんたん!科学実験~ペーパークロマトグラフィーで星空アート

 

星はグリッターのりとボンドで付けたラメ、月は丸いシールを半分に切ったものを使っています。
 

【科学まんが】科学の楽しさを教えてくれる『科学まんが』~小学生息子のお薦めシリーズ
私には、理科が大好きな小学生の息子がいます。 息子に国語や算数を教えたことはありますが、理科を教えたことは殆どありません。自分も科学が好きなので、楽しささえ伝えればきっと自分から興味を持つだろうと思ったからだと思います。 これまでに家での簡...

 

小学生の自由研究にも!~実験のヒントなど

表面張力は、私達の身近にあるちょっと不思議な科学です。

もっと調べて自由研究にも活用してみてください!

 

【小学生のための自由研究ヒント

  • アメンボが水面に浮かんでいるのも表面張力によるものです。
     
  • 界面活性剤入りの台所洗剤には、表面張力を弱める力があります。そっと1円玉を水面に浮かべて試してみてください。
     
  • 水は温度が高くなると(お湯になると)表面張力が弱くなります。
     
  • ジャムの空き瓶などの内側に防水スプレーをかけて乾かした後、水を入れて、水面と瓶の壁の角度(接触角)はどうなるか試してみよう!

    ※防水スプレーは吸い込むと有害なので、注意しましょう。食器など食材を入れるものでは実験しないようにしましょう。 

防水スプレーを使うと、接触角のことが理解しやすくなると思いますよ!

『なぜ?』という気持ちを大切に、自分だけのオリジナルの自由研究に挑戦してみてください!