子どもの自己肯定感とはどのようにして育てればよいのか。そのヒントを文献や実践の中から探り、自己肯定感について、深く考えてみようと思います。
根拠のない自信
自信には二種類あります。「根拠のある自信」と「根拠のない自信」です。
まず、「根拠のある自信」とはどのようなものでしょうか?
児童精神科医 佐々木正美著「はじまりは愛着から」に、このような記載があります。
根拠のある自信とは、勉強や稽古事やスポーツが得意でよくできるという類の自信です。
(中略)
根拠のある自信ばかりを育てられてきた子どもが、自分よりもっと優れてよくできる相手に出会うと、簡単に劣等感を覚えてしまいがちだということです。
ですから、子どもの自己肯定感を育てるには、根拠のある自信ではなく、他者と比べる必要がない「根拠のない自信」をたくさん育てる必要があります。
そのために、親はどのように子どもと接するべきなのかを考えてみたいと思います。
この章では、児童精神科医 佐々木正美著「はじまりは愛着から」の引用をしながら、子どもと親の心のつながりについて考えてみます。
無条件に子どもを愛する
~引用~
全面的に受容される時期があればあるほど、人間は安心して自立できる動物です。ありのままの自分を承認されることが自信になります。
つまり自分を信じるためには、まず他人を信じる必要があるのです。だからこそ、親である私達が子どもを無条件に愛し、子どもから信じてもらうこと。これが、とても大切です。
愛情の伝え方
親から子への愛情の伝え方は、「読み聞かせ」、「スキンシップ」など数えきれない程ありますが、誰でも今すぐに実践できる一番の方法は「食」ではないでしょうか。
~引用~
教育の基盤や基本が家庭の中で培われるのだとしたら、そのいちばんの機会は食事のときの団欒にあると強調したいと思います。
意外だと感じられる方もおられると思いますが、生きるのに一番大切な「食」で子どもに愛情を伝えたり、コミュニケーションをとることは、とても自然なことと言えます。
子どもに信頼されるためには
子どもが親を全面的に信頼するためには、親の側も子どもを信じて、理解しようと努める必要があります。
- 子どもの話をよく聞く。
- 嬉しい気持ち、悲しい気持ちを共感する。
- 親からの要求ばかりでなく、子どもの要求にも耳を傾ける。
- 思った事をお互い言い合える風通しのよい関係を築く。
など、子どもの目線に立って、どんな親であれば信頼してもらえるのかを考えることが大切だと思います。
私も、忙しくてイライラしてしまうことがよくあるので、いつもいつも理想的な親でいることはできない気がしています。
しかし、「子どもとの信頼関係をつくる」という事をいつも心のどこかに留めておくことで、親として進むべき方向を修正できると思います。
焦らずに、できることからやってみましょう。
自己肯定感を育む具体的な取り組み
我が子は、とても苦手分野が多い子です。
そして、そんな己の状況を幼稚園時代には自覚してしまい、自信を失いかけていました。
親の私達が、乳幼児期にもっとありのままを受け入れてあげられたなら、他人と同じようにできることを求めずにいてあげられたなら、子どもの状態も違ったのだろうと思います。
しかしながら、もう過去には戻れません。ですから、今できることを少しずつ実践してきました。
現在、我が子は自信を回復し始めています。
ここに、我が家で行われている自己肯定感を育む取り組みをご紹介し、子どもの近況と共にお伝えしたいと思います。
子どもの強みを本人に認識させる
我が家では、子ども自身に何が得意なのか?をあげてもらい、それを本人に強く意識させるようにしています。子ども曰く「自分は想像することが得意」なのだそうです。
- 絵が苦手でも、世界感を色で表現するのは得意。
- 折り紙を折るのは苦手でも、セロテープでつなげて生き物を創作するのが得意。
- 文字を読んだり、言葉で伝えたりするのは苦手でも、頭でイメージするのは得意。
他にもいくつかありますが、こういった具合です。
そして、子どもに想像力があるなと少しでも感じた時には、必ず本人に伝えるようにしてきました。
その結果、何か辛いことがあった時、「僕は、想像するのは誰にも負けないから、他のことがうまくいかなくても大丈夫」と言うようになりました。
日頃から子どもをよく観察して、得意なものを見つけてあげられたなら、「あなたの○○なところは本当に素晴らしい」ときちんと言葉にして伝えてみてはいかがでしょうか。
お手伝いをしてもらい感謝を伝える
子どもはいつも親に認められたいと思っているように私には見えます。ですから、少しずつ家事を教えて、感謝の気持ちをその都度、伝えています。
我が子は粗雑な方なので、家事を手伝ってもらうことに親の私の方が消極的でした。
しかし小学校に上がった頃、いくつか簡単な家事をしてもらうようにしました。
- 洗面所と廊下だけ、掃除機をかけてもらう。
- 自分の洗濯ものだけ、たたんでタンスにしまってもらう。
- 簡単なところだけ、料理を手伝ってもらう。
楽しく取り組んでもらいたいので、始めは範囲をかなり限定して簡単なものだけ手伝ってもらいました。特に料理は、本人も出来栄えに得意気で、何度も何度も「僕が作ったから美味しいでしょ?」と言ってきました。
例え、玉ねぎを二三切れ切っただけで「目が痛いからもういいや」と言っても、瓶を垂直に立てて滝のように塩を振っても、木べらでお鍋の中心部の表層だけを撫でて「バッチリ炒めたよ」と言っても、陰で親がフォローして何とか完成させます。
そして最後は、「○○ちゃん作ってくれたから本当に美味しいね」「忙しかったから本当に助かったよ」と伝えました。そんな時はいつも、子どもの目がキラッと輝きます。
家族の一員として認めていることを、お手伝いを通して子どもに伝えてみてください。
スモールステップを用意する
我が子は成長のスピードがゆっくりなので、なかなか達成できない目標を掲げるよりも、少し頑張れば実現可能な目標設定をすることを心掛けています。それはできるだけ多く、達成する喜びを感じてもらいたいからです。
例えば、字を習いたての頃、音読が極端に苦手でした。この年齢であれば、こんなことができて当たり前と思ってしまうと、どうしてもセオリー通りの練習法をさせたくなってしまいます。数をこなせばよいと。しかしこれは、自信を失うばかりで、国語に対する苦手意識を増幅させるだけでした。
そこで、2、3歳の頃読み聞かせをしていた幼児向け絵本を音読することにしました。どんなに短い文章でも、間違わずに読めたら褒めることを繰り返し、子どもは少しずつ少しずつ自信を回復していきました。
そして、必ず一つのステップをクリアする度に、子どもに伝えたことがあります。
「以前できなかったことが、ほら一つできたよ」「また一つできたよ」と。
子ども本人にも、確実に成長しているのだという事実を、具体的に伝えることが大切だと思います。
習い事を上手に活用する
運動の苦手な我が子は、自ら進んでスイミングスクールに入りました。そして、「楽しいからプールだけはやめない」「私にはプールがあるから、他の運動は苦手でも大丈夫」と言っています。
始めてから一年半経ちまずが、まだバタ足すらできません。それでも、そう言ったのです。海の生物が大好きでシュノーケリングに憧れていることも一因かもしれません。親の私には、はっきりした理由はわからないのですが、きっとただただ水の中が楽しいのでしょう。
テストに落ちて泣いたことも、幾度となくありました。
家庭の中だけでは教えられないことも、習い事を上手く活用することで、子どもの自信につなげられると思います。親はサポート役として、子どもの成長を見守ってあげたいです。
子どもの自己肯定感は「親子の心のつながり」から
子どもの自己肯定感を育むことと、子どもをただ褒めることとは少し違うと思います。
まず、親子の信頼関係をしっかり育み、「信じる心」の素地を作ることが大切だと感じます。親子が二人三脚で作り上げた信じる心は、友人との出会いや社会との関わりによって、更に豊かになっていくことでしょう。
子どもが何歳であっても、もう今更遅いなどと考えず、親子の信頼関係を深めるように努めていきましょう。
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