読み書きや運動など、苦手分野が多い子どもはもしかすると『見えにくさ』が原因かもしれません。
手先が不器用で運動も苦手な我が子は、幼稚園時代の3年間療育に通っていました。そこで作業療法士の先生から『ビジョントレーニング』という目の訓練があることを教わりました。
これは発達が気になる子どもに限らずプロの運動選手も取り入れている手法だそうです。
我が家では、ナツメ社の『ビジョントレーニング』という本を購入し、療育での内容と本の内容をアレンジしながら、自宅で目のトレーニングを続けています。
この本によると何歳であっても手遅れということはないのだそうです。トレーニング風景をご紹介しながら、ビジョントレーニングの意味と効果について書いていきます。
視覚機能について
学習や運動など様々な分野に影響してくる『見る』ための機能について、実践レポートの前に概要を説明する必要がありますので、ナツメ社の『ビジョントレーニング』を参考に少しだけ説明させていただきます。
見る力
見る力は生まれながらに備わる力ではなく、6歳くらいまでに様々な経験を通して徐々に基礎ができあがるものだそうです。
ところが、発達に偏りがあるなどの理由でその力が育ちにくく見る力が弱い子供がおり、場合によっては発達障害である場合もあるそうです。
また、近年は外遊びの機会が減少しており、見る力が十分育ちにくい環境でもあります。遠くのものを見る、動いているものを眼で追うといった経験が無ければ発達に遅れが出る場合があります。
そこで、なるべく屋外で遊ぶ機会を作ると共に、訓練で眼と体を動かして経験の不足分を補うことが必要となってきます。
視力だけでない視覚機能の3ステップ
止まっているものの単純な形を見分ける視覚機能を視力といいます。
しかし視覚機能には視力以外にも重要なものが存在するのだそうです。
それが、動くものを眼で追ったり、把握したり、連動させて体を動かす能力です。その三つの機能が一つでも不足すると、『見えにくさ』の原因となります。
この三つの機能を訓練するのがビジョントレーニングの目的になります。
STEP1 入力
動いているものを眼で追ったり、眼球を動かす運動のこと。
弱いとこんなことが・・・
例)文字の読み書きや板書が苦手
例)球技が苦手
STEP2 情報処理
眼から入った映像を情報処理して全体像を把握する働きのこと。
弱いとこんなことが・・・
例)よくものをなくす
例)お絵描き・ぬり絵が苦手
例)なかなか字を覚えられない
例)よく人やものにぶつかる
STEP3 出力
STEP1で映像を入力し、STEP2で情報処理し、連動させて体を動かす機能のこと。
弱いとこんなことが・・・
例)手先が不器用
例)運動が苦手
見えにくさの具体例
視覚機能の問題かもしれない「日常の困り事」の例をまとめてみます。
当てはまる項目が多いお子様は視覚機能を向上させるため、是非本を見ながらビジョントレーニングを行ってみてください。
我が子の場合には6項目が当てはまりましたが、レーニングにより現在はだいぶ回復してきました。
1.同じ行を何回も読んだり、読んでいる場所がわからなくなったりする
2.文字が読めないほど汚かったり、マスからはみ出したりする
3.頭を動かしながら本を読む
4.板書を写すのに異常に時間がかかる
5.手先が不器用で、おはしやハサミをうまく使えない
6.集中して見ることが苦手で、話を聞くときに、たえず視線を動かす
7.ものや人によくぶつかる
8.投げられたボールをうまく受け取れない
※引用)ナツメ社 ビジョントレーニング
ビジョントレーニング実践レポート
本書の中のトレーニングを参考に、一部アレンジを加えながら我が家で行っている内容を3つだけご紹介します。
本書には他にも多数のトレーニングが記載されており、とてもお薦めです。
眼を動かすトレーニング
眼をスムーズに動かすトレーニングです。全ての訓練の基本となるので、できるだけ毎日行うようにしています。
我が家のやり方はペットボトルのキャップ(目立つ色)を使います。
例
◆赤いキャップを眼に近づけていき、寄り目を作る訓練
◆親が赤いキャップを持ち、子供の顔から40cm程の位置でぐるっと一周させ、眼で追わせる訓練
◆親が赤と青のキャップを、子供の顔から40cm程の位置で左右や上下や斜めなど対角に配置して持ち、赤→青→赤→青・・・と交互に眼を移動させる訓練
です。
効果
当初は首が動いてしまい眼だけを動かすことが全くできませんでした。何度も繰り返すうちに劇的に上達して、今では親の私より上手く眼を動かすことができるようになりました。
まねっこ遊び
見本と同じポーズをとる遊びです。
見本と向かい合って同じポーズをとることはだいぶ上達しましたが、向かい合って左右対称のポーズをとることはなかなか難しく日々練習中です。
数字探し
ランダムに散らばった数字を1から順に探して指でタッチしていくトレーニングです。
我が子は特に外側の数字が目に入りにくいようで、まだまだ上達とまではいきません。
トレーニングを続ける工夫
ビジョントレーニングは、定着するまで根気強く続けた方が良いので、子供が継続的に楽しく取り組んでくれるよう工夫する必要があります。我が子を見ていて感じたポイントをお伝えします。
時期
我が子の場合には、年少~年中の時期は療育に通っても、殆ど真面目にトレーニングに取り組んでくれませんでした。
年長になり納得すれば少しやるようになり、小学校に入学した今は殆ど嫌がることはなくなりました。なぜトレーニングが必要なのかを理解できるようになってきたのだと思います。
特に幼児の場合には楽しさを感じられなければ取り組んでくれない可能性が高いので、子供の様子を観察して無理をせず楽しめる項目だけを少しずつ行うのがよいと思います。
相性
頑張っても上手くできないトレーニングをやらされると、子供はやる気が出ないばかりか自信までも失ってしまいます。難しい項目はやらないとか、少しアレンジをしてレベルを下げる工夫が必要だと思います。
見通し&お楽しみ時間
これから何をやらされるのか分からないと不安になり、やる前から「できない」「つまらなそう」といって取り組んでくれないことがあります。
まずは何をやるのかを取り組む順番に紙に書き出し説明(絵でも可)します。そして終わったら「このおもちゃで遊んでいいよ」とか「おやつにしようか」と最後にお楽しみ時間を設けるとよいと思います。
療育では必ずそのようにしていました。
取り組む時間
長時間取り組むほど効果が出ますが、子供の集中力は長くても20分程だそうです。まずは2~3分からとか、何回かに分けて取り組むとよいと思います。
我が家では、時間のある日のみ「おやつの前に2~3分」、「夕飯の後に2~3分」というように行っています。
信じて続ける
ナツメ社の『ビジョントレーニング』によれば、
どんな子でもやれば必ず効果があらわれるので、根気強く続けることが大切
なのだそうです。その言葉を信じて子供と一緒にビジョントレーニングを行っていこうと思います。