小学生の読書感想文にお薦めの本をご紹介します。
岩佐めぐみさん作の偕成社『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』のシリーズです。最新刊『ぼくは気の小さいサメ次郎といいます』まで全5作あり、一冊完結の本でありながら、次の巻へその次の巻へとストーリーが繋がり広がって、人は一人ではないのだなと心がじんわり温まる本だと思います。
1作目だけ読むこともできますし、複数冊読んでお気に入りの本について読書感想文を書くこともできます。学年によっても読み方が異なると思いますので、対象年齢なども詳しくお伝えしていきます。
そしてこの本は、ドイツ児童文学賞を受賞し世界中の子どもたちに愛されている本でもあります。
主人公は動物たちですが、みんな私達のすぐそばにいそうなキャラクターばかり。例えば強がっていても本当は寂しがり屋さんとか、自分に自信がない動物、一人ぼっちで寂しい動物・・・・・・。
でもね、世界はひろいよ。
引用:岩佐めぐみ作「ぼくは気の小さいサメ次郎といいます」(偕成社)
あなたのこと、わかってくれる人、必ずいます。
もしこの本から、そういうことを感じとってくれるとしたら、子どもの明日もきっと変わってくると思います。今の時代にこそ読んで欲しいお薦め本です。
対象年齢
挿絵もあり文章も決して難しくはないのですが、100ページ前後のページ数と心の描写も多いことを考えると、小学校中学年(小学3年、小学4年程度)に最も向いている本だと思います。
小学校低学年でも高学年でも、読書感想文として書きやすい本だと思います。
【小学校低学年(小学1年、小学2年程度)の場合】
まずは、第1作『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』だけ読んでみるのがおすすめです。ちょうど100ページありますが、8章に分かれているので少しずつ読み進めることができます。
まだ小学校低学年ですと、心の描写を細かく読み取ることが難しいと思います。でも、ほのぼのとしたわかりやすいストーリーで決して難しくはなく、笑える要素も入っているので、低学年なりの感性で楽しく読めると思います。
【小学校低学年(小学3年、小学4年程度)の場合】
勿論、第1作『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』だけでもOKです。でも、このシリーズは読み進めるほどに、心に少しずつ浸み込んでくる本だと感じます。余裕があれば、第2作の『わたしはクジラ岬にすむクジラといいます』まで頑張って読んでみて、好きな方を読書感想文に書いてみるのもよいのではないかと思いました。
【小学校高学年(小学5年、小学6年程度)の場合】
何冊読んでもよいのですが、最新刊『ぼくは気の小さいサメ次郎といいます』まで全5作読んでみると、更にこのシリーズ本の良さが味わえると思います。
というのも、それぞれの本に悩みを抱えたキャラクター達が登場して、読み手の子ども達の身近にいる誰かと共通点があるだろうと思うからです。もしかしたらそれが、読み手本人かもしれません。どこかにきっと共感できるポイントがあると思います。
読んでみてどう感じたか、人とどう繋がっていけばよいか、これから世界と自分がどう関わっていくのかなどと、子ども達にあれこれ考えてほしいなと思いました。
どんな本か
「退屈なキリンが海の向こうのまだ見ぬ誰かに向けて始めた、心温まる文通のストーリー」と、一言ではとてもとても語れないお話だと思います。それだけで終わるには、とってももったいない気がします。
ハラハラする事件もありますが、子どもが安心して読めるほのぼのしたストーリーです。悪人が出てくるわけでもありません。
でも、登場するキャラクターが皆どこか欠けた部分を持っているように感じます。そしてそれは私達の身近にもいる誰かと重なってしまうのです。
心の中にある、例えば一人ぼっちの寂しさや、コンプレックスという苦しみは、他人がいるから感じるものです。でもそこから救い出してくれるのもまた、自分以外の誰かであり、人と人との繋がりがりなしに生きていくことはできないのだと感じさせられる本です。
きっと自分にも、見守ってくれる誰かがいる。きっとどこかに応援してくれる人がいる。そういう希望を子どもに届けてくれる本ではないでしょうか。
本が世界中の子どもに届くまで
1冊だけのつもりが、息子にせがまれ全5冊購入して読みました。時には目を潤ませながら読み、今では息子以上にこの本のファンになっています。
古本屋で買った一冊に、たまたま岩佐さんのサインが書かれていました。
言葉の意味が理解できなかったので、色々調べていくうちに、この本が世界中の子ども達に届くまでにとてもユニークな経緯があり、長い年月がかかっていることがわかりました。
じわっと静かにゆっくりと、心の奥の方に温かいものが浸み込むようなこの本の特徴と重なるエピソードだったので、少しご紹介したいと思います。
この物語は、岩佐さんの夢がもとになっています。それが本として出版されるまでには夢から十数年。ご自身が作家になるとは夢にも思っていなかったそうです。岩佐さんのイメージとぴったりの高畠純さんの絵と出会い、夢の続きを書き始めました。
出版されてからも、韓国、台湾、中国、メキシコ、ブラジル、ニュージーランド、ドイツ、トルコ・・・と翻訳されて、徐々に世界中に広まっていきました。
なんと出版から17年もの時を経て、ドイツ児童文学賞を受賞を受賞したと言いますから、本当に驚きですよね。
世界中の子ども達に愛され、子ども達に背中を押され、数年、十数年という長い年月をかけて物語の続きが生まれていったのです。
まとめ~子どもと大人になった元子どもに
当たり前のことが当たり前にできないコロナ禍に、大きく変わったものがたくさんあると思います。私は、人と人が繋がる意味を再確認する時だと感じました。大人になった私にも、そんなことを教えてくれる本でした。
この本は一話で終わっても十分に楽しめる本です。それにも関わらず、数年後に次作、また数年後に次作と長い年月をかけて物語が続いてきました。今では世界中から岩佐さんのもとにファンレターが来るといいます。この先続きがあるかはわかりません。
この本から勇気や希望をもらった子ども達の心の中で、新たな終わりのないストーリーが紡がれていくことを願っています。
第1作はこちらより。
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