家庭や学校等で、行動や発達がちょっと「気になる子」。
そのような子ども達に「今」何が必要なのか?
満足のいく対処法を教えてくれる場は、実はとても少ない気がします。
私も発達がゆっくりな息子を育てる中で、少しでも情報を集めようと努めてきましたが、療育や親の為の子育てトレーニング(ペアトレ)に参加しても、”ずばりコレ”という対処法にはなかなか出会えませんでした。
そのような状況の中で、今回ご紹介する韓昌完(ハン・チャンワン)さん著『その子、発達障害ではありません IN-Childの奇跡』という本に出会いました。この本は、
子どもの発達に標準はなく1000人いれば1000通りの多様性があり、発達途中の子どもは常に変化しているという著者の言葉の通り、発達障害の有無には関係なく
目の前にいる子どもの「今」のニーズは何かを捉え、子どものデータや文献を収集・分析して対処法を示してくれる画期的な本
だと思いました。
主には、教育関係者向きの本だと思いますが、家庭においても参考になる点がたくさんありました。
- 気になる子に対し、対処法がわからず困っている方。
- 気になる子の行動とその背景にある原因について理解を深めたい方。
- 気になる子に対し、既にある程度対処法は試しているが、方向性が合っているのか確認したい方。もしくは、新たな対処法のヒントを模索したい方。
このような方に読んでもらいたい一冊です。
この記事は、 『その子、発達障害ではありません IN-Childの奇跡』 を読んで何がわかるのかをまとめ、子どもの発達に悩みを抱える母親としての目線から本の感想を書いたものです。
私も、我が子を理解する上でとても参考になりました。
まずは、子どもを深く知ることから始めてみると、少しずつ対処法も見えてくると感じました。
その1:IN-Child~子どもの発達の捉え方
「IN-Child 」とは、「包括的教育を必要とする子」を指しています。
「身体・情緒・家庭環境などの理由により、専門家と他の関連する人々との連携的な支援を必要としている子ども」と私は捉えました。
普通は子どもの発達を語る上で、知的な遅れとか発達障害という言葉がよく出てきます。
しかし「IN-Child 」 という定義においては、医療機関での診断の有無とは無関係に、連携的な支援を必要とする全ての子どもを含んでいる点がとても新鮮でした。
つまり、我が子のように診断が無くても生活面や学習面で困難を抱えている子どもも含まれるのです。教育現場で「気になる子」と表現されていた子どもを 、研究者と現場の教育関係者が協議しながら「IN-Child 」 と定義したそうです。
とても大切だと感じたのは、定義そのものではなく、支援の具体的な手立てがあるのかどうかという点だと思います。
この課題に対して、「 IN-Child Record 」という構造を開発し、子どものデータの蓄積・文献の収集・分析等を行い、具体的な手立ての提案&フィードバックを繰り返すという教育現場と連携した取り組みを行っており、その結果がこの本に詳しく掲載されています。
その2:いろんな子どもがいる~ IN-Child の特徴と支援
本の中には、例えば「よく飛び出す子」というように22人(22パターン)の IN-Child が登場します。
この子ども一人一人に対し、身体面・情緒面・生活面・学習面の状態をスコア化し、行動の原因や支援の具体的対処策などが示されています。
実際には子どもの数だけパターンが存在するので、必ずしも当てはまるものではないかもしれませんが、「こういう子、よくいるね。」という子が22人の中にもたくさん出てくると思います。
我が子は、まさに「よく飛び出す子」でした。幼稚園時代、我が子が園庭を飛び出さないか見張る為、お迎え時間の30分前に門で見張りをするように言われていました・・・。
私は息子と療育に通った経験があるので、何となくそれぞれのIN-Childの行動の原因を推測できるのですが、例えば姿勢の維持の難しさが集中力の低下や学習にまで影響するというようなことは、なかなか想像できないことではないでしょうか。
この本では、
- まず、いろんな子(IN-Child)が存在することを知る。
- それぞれのIN-Childの行動の原因を知る。
- 原因に応じた対処法を知る。
ことができます。
子ども本人が、実は一番困っているのではないかと感じました。
まずは、そんなIN-Childにしっかりと目を向け、SOSに気付いてあげることが何よりも大切だと思います。
その3: 個別の教育プラン~IN-Child Record
IN-Childの 行動の原因や支援の具体的対処策 を考える手段として、 身体面・情緒面・生活面・学習面の 状態をスコア化した「 IN-Child Record」という評価方法が紹介されてます。
スコアと言っても、発達を評価するものではなく、課題やニーズを把握するためのものです。
本の中にも記録用紙が掲載されているので、すぐ目の前に気になる子がいる場合にはすぐに記入して、その子どもの大まかな傾向を探ることもできます。
ただし、原因・支援の具体的対処策などの情報を得て運用する為には、子どもを評価する人が簡単な講習会を受講する必要があるようです。
因みに本の中には、実際に運用した実例10ケースが掲載されています。
子どもの原因から具体的な対処策が詳しく説明されており、子どものBeforeとAfterがとてもわかりやすい形で書かれています。
その4:各家庭でできることは何か?
「 IN-Child Record」 が教育活動が行われる現場で使用するものであるならば、家庭においてこの本は役に立たないかと言われれば、決してそうではないと感じました。
その2でも説明した通り、本の中には22人の IN-Child が紹介されており、子ども気がかりな面があると感じている方であれば、恐らく22のうちどこかに共通点を見つけられると思います。
本に付いてる 「 IN-Child Record」 記入用紙を使って、親目線で子どもを評価し大まかな課題を見つけ出すことも可能だと感じました。
私は、22人のケースを読んでいて、とても胸が痛くなりました。我が子にもあてはまるということだけではなく、理解されずいつも叱られて傷ついている子ども(やその保護者)が、きっとたくさんいるだろうと感じたからです。
そのような子どもや親にとって、理解者が一人でも増える世の中になることを心から願っています。
感想~我が子の発達に悩む親として
発達がゆっくりな息子を育てている親として、この本の感想をまとめてみます。
◆タイトルについて
もし、”発達障害ではありません”というタイトルの文字を見て、自分の子どもが発達障害ではないと安心したいという理由でこの本を手に取った場合、もしかしたら期待した答えは見つからないかもしれないと感じました。
発達障害かどうかではなく、どんな子どもも発達や成長の途中にあり、子どもが必要としているニーズを把握して適切に支援していくことで、成長していくのだという考え方が示されている本だと思います。
実際、息子もゆっくり成長しています。幼稚園時代「よく飛び出す子」だった彼は、小学二年生の今、何とか着席して授業を受けています。不適切な場面での発言やじっとしているのが嫌で体をブラブラ動かしていることも多いですが、「飛び出さない子」に成長しつつあります。
◆医療機関での診断の必要性は子どもによって異なるのでは?
例えば、発達障害を例にとってみます。
著者は、「発達に障害がある」という決めつけが、どれだけ理不尽なのか常に感じているとおっしゃっていました。確かにそうなのです。
息子も「発達の基準から著しく逸脱している。」「〇〇くん、やっぱりグレーゾーンなの?」などという言葉を悪気無く使われて、内心とても傷ついた経験があります。
しかし一方で、人によっては発達障害と認定されることで、自分を責める気持ちが軽減したり、何らかの配慮を周囲から受けることができたりするケースがあると思います。
医療と教育現場、家庭と教育現場というように、子ども一人一人に合わせた各方面との連携がとても大切だと感じました。
◆感情のコントロールについて
IN-Childと呼ばれる子ども達は、どうしても叱られる場面が多くなるのが現実だと思います。
いくら頭で理解していても、親の私も感情のコントロールが難しいことが多々あります。
この本を読んで感じたのは、幼児というよりは小学生以降の子どもに対して有効な手段ではないかというものです。
息子の場合、幼児期は制御不能と思われる程、何をしてよいのかわからない時期がありました。思い返せば、息子本人が自分のことをまだ理解できない年齢だったのだと思います。
- 本人のやる気にアプローチする。
- 他人の目も気にする。
- 親や周囲の気持ちを少しずつ理解できるようになる。
といったことができる年齢になってこそ、役に立ってくる手段だと感じました。
IN-Childをただの問題児で終わらせない仕組みが必要です。
まずは、親の私も少しでも有益な情報を集め、我が子の一番の理解者になりたいと思いました。
『その子、発達障害ではありません IN-Childの奇跡』 を興味のある方は、是非一度読んでみてください。