算数でありながら、国語でもある。
謎解きのようで、いつの間にか頭を鍛えている。
解けなくても、楽しくて悔しくてやめたくない。
まるで『トリック』のような衝撃的なドリルに出会いました。
小学生の我が子がこれ程夢中になったドリルは過去に一つもありません。
それは、中学受験算数界のカリスマ・宮本哲也さんの『算数と国語を同時に伸ばすパズル』です。
ポイントは、
情報を整理する論理力と、あれこれ考え抜いて頭を鍛える試行錯誤型の学習スタイル。
このドリルは、解けなくても学校の国語や算数の成績が下がるわけでもなければ、解き方を伝授してくれるドリルでもありません。思考力を鍛えるためのドリルなのです。
子供が自分で頭をフル回転させ、考えて考えて考えて・・・
「解けたら最高に楽しい!!」
そんなドリルでした。
何しろ宮本先生は、強育論という著書の中でこのように述べているのです。
私の授業の目的は子どもに頭を使わせることにあります。問題が解けるかどうかはどうでもいいのです。頭を使い続ければ必ず頭がよくなります。元のレベルがどれだけ低くても関係ありません。
引用:教育論(ディスカヴァー携書)
入門編・初級編・中級編・上級編とレベルは徐々に上がりますが、問題はずっと同じスタイル。至ってシンプルな構成でわかりやすいです。
- ひらがな・カタカナが読める。
- 簡単な足し算と引き算ができる。
※上級編は一部簡単なかけ算が出てきます。
こんな小学生なら、誰でも取り組めます。
このドリルで対決しようよ!
お母さんが解けなかったら僕が教えてあげるからさ!
決して勉強が得意でも好きでもない小学3年生の息子が実際に言った言葉です。
入門編を2~3日、初級編を1か月半、中級編を1か月で解き終わり、現在上級編の2/3が終了しています。時には3時間以上解き続け、就寝時刻が大幅に遅くなったこともありました。
そこまで没頭してしまう『ドリルの特徴』とは何か?
そして『息子に起きた心の変化』などもお伝えしていきたいと思います。
著者の意図~『賢くなる』とはどういうことか?
まず、一風変わったドリルを十分に楽しむために、著者の教育に対する考えを少し知っておいた方がよいと思いました。
著者の宮本哲也さんは、中学受験算数界のカリスマとも言われている方ですが、ご自身が主催されている算数教室の方針は「叱らない」・「宿題を出さない」・「教えない」などとてもユニークです。
まさに、今回ご紹介する『算数と国語を同時に伸ばすパズル』にも当てはまる方針だと感じました。
宮本先生は、ご自身の著書で「算数をやる目的」について次のように述べています。
算数をやる目的はただ一つ、「賢くなるため」です。
引用:超強育論(ディスカヴァー携書)
では、何のために賢くなるのか?
「よりよく生きるため」です。「よりよく生きる」とは、「自分に合った生き方を見つける」ことと言い換えてもいいでしょう。
本の詳細(Amazon)>>
そして、別の著書では次のようにも述べているのです。
子どもを育てるということは、生き方を伝授するということ。
引用:教育論(ディスカヴァー携書)
算数を学ぶことは、子供の人生にとって大きな意味を持つということなのです。
そして宮本先生によると、論理的に解くという意味において算数と国語の解き方は全く同じなのだそうです。
大切なのは、自分の頭で考える力。そして子供の自立。
それが「生きる力」につながると真剣に考えている方だと思います。
結構辛口なので中学受験をされない方は驚かれるかもしれませんが、強い子供を育てるための「愛情」なのかもしれません。上記の二冊の本は、子育て本としても多くの気付きを与えてくれる本でした。
親の心構え~解けない時の見守り方
子供とはとても正直なもので、楽しくないとやらないのです。
だからこのドリルは、謎解きのように楽しい構成になっています。
情報を整理しながら自分の頭で考え続けることが目的です。
そして自分で解けたなら、それが自信となって積み上がっていく仕組みです。
そのために、入門編から上級編までずっと同じ問題スタイルになっています。シンプルだから徐々に難しくなっても、解けそうな気がしてくるのではないでしょうか。
自信を積み上げるために私がお薦めしたいのは、
入門編から気長に取り組むこと
です。
我が子は、最初の一二問こそ苦戦しましたが、入門編を2~3日で解いてしまいました。
親としては何だかもったいないなと感じましたが、本人はこれでかなりの自信をつけたのです。
そして一冊だけのつもりが本人の希望で増え続け、現在4冊目を解いています。
・どうしても解けない問題はいったんあきらめましょう。
引用:教育論(ディスカヴァー携書)
・たいていのことは自力でなんとかなります。子どもの力を信じなさい。
まさに、手出し無用。
子供を信じて待つドリルなのです。
ドリルの特徴と使い方
前章でも述べましたが、要領をつかみ自信を積み上げるために、入門編から取り組むのがお薦めです
高価なものではないので、子供がやる気になったらレベルアップしてみてください。やればやっただけ子供の自信につながると思います。
◆例題
初めに一度だけ例題と解き方が載っています。ここでしっかりコツをつかみましょう!
(あとは解き方がなく解答のみです。)
◆謎解き文章問題(表面)
表面は必ず、「複数の短い文章から、必要な情報を読み解く」謎解きのような問題になっています。
問題の種類はいくつかありますが、
『情報をつかむ』→『整理する』→『取捨選択しながら答えを導く』
というプロセスは同じです。
例)順位を当てる、年齢を当てる、並び順を当てるなど
◆数字パズル(裏面)
裏面は必ず数字のパズルになっています。
決められたルールに則り、数字を当てはめていきます。
簡単な足し算と情報整理能力が必要となります。
問題を夢中で解いているうちに、自然と暗算の訓練にもなると思いました。
◆やる気の持続
表面には全て、「解ければ天才!」と書いてあります。
子供だましに見えますが、息子は結構喜んでいます(笑)。
表面全てに書かれていても、褒めてあげてくださいね!
また、級分けしてあり、級をクリアするごとに『級位認定証』がついています。
入門編:初級~上級
初級編:10級~8級
中級編:7級~4級
上級編:3級~1級
これも、息子受けが良いです。
小学3年生の息子の心の変化
真剣であればあるほど、解けないとイライラしてしまう息子です。
でもやめないのです。入門編から少しずつ少しずつ積み上げてきた自信があるからこそ、
『解けそう』→『それなのに解けない』→『悔しい』→『でもあきらめたくない』
となるのだと思います。
解答を見て適当にわかったふりをしていたいつもの息子の姿は、どこにもないのです。
これには心底驚きました。
特に算数が苦手な子供は、解答の解説が丁寧な問題で、且つ基礎的な問題を解くことが多いと思います。そんな子供にとって解説のない難問などというものは、全く出会ったことのない未知の問題なのでしょう。
上級編ともなると、親もなかなか答えにたどり着けず子供に負けていますからね・・・。
でも、子供がイライラしても大丈夫!
宮本先生の言葉を聞けば、きっと安心しますよ。
解けなくて悔しがるのは、その問題を本気で解こうとしているからです。
引用:超強育論(ディスカヴァー携書)
「うー、どうしてもわからない!やめた!」となっても放っておきましょう。投げ出しているように見えても、脳はその問題を解くことをあきらめてはいなくて、遊んでいる間も、お風呂に入っている間も、寝ている間も解き続けているのです。
この場合の「あきらめ」は「放棄」ではなく、「保留」です。そして、保留中に頭の中でさまざまなもの熟成していくのです。
「こんな問題解けるわけないよ。」「こんな問題解ける人なんて世の中にいないよ。」が口癖だった息子が、現在一級を解いていることが何よりの証拠です。
※追記:この後、一級まで全て終了しました。
無理して解く問題ではなく、解きたいから解くドリルだと思いました。
苦手分野の多い我が子を見守るために
普段から苦手分野の多い息子と接する中で、私が心がけているのは、
子供のありのままを受け入れ、子供の力を信じて待つ。
ということです。
とは言え、『待つ』ことは時に楽しく、時に苦しくもあります。
そして、『待つ』ことと『何もしない』こととは少し違う気がします。
親なりのちょっとした工夫が必要だと感じています。(手出しではないです。)
工夫とは、子供にとっての『楽しい』を1つでも多く見つけてあげることではないでしょうか。『つまらない』を『楽しい』に変える工夫も必要ですよね。
宮本先生は、算数を『楽しい』に変える天才なのかもしれないと思ってしまいました。
皆様も、子供が成人して巣立っていくまでの貴重な日々を、親子で楽しくお過ごしください。