スプーンのくぼみに顔を映すと、なぜか逆さまに映り、不思議に思った経験がありませんか。
小学生の我が子は、それが気になって気になって仕方ない様子で、「理由をどうしても知りたい。」と言い出しました。
しっかり学ぶには、実は高校の物理で習う凹面鏡(おうめんきょう)の知識が必要になってしまうのです。さすがに小学生に理論を理解させるのは難しいですよね・・・。
でも、小学生も3年生くらいから理科で『虫眼鏡(凸レンズ)』を使います。
中学では、虫眼鏡(凸レンズ)の性質を学びます。
この虫眼鏡(凸レンズ)の性質を知っていると、だいぶ理解しやすくなるのです。
この記事では、
”なぜスプーンのくぼみに映る顔が逆さまになるのか?”
を、小学生や中学生にもなるべく理解しやすいように説明しています。
虫眼鏡を使った工作のアイデアもご紹介していますので、理解することよりも不思議だなと思う感覚を楽しんでもらえたら嬉しいです。
なぜ逆さま?の前に!~まずは虫眼鏡について知っておこう!
虫眼鏡についているレンズは、中央がふくらんでいるので、凸レンズと言います。
ここからは中学生で習う内容ですが、一つ一つ丁寧に説明していきますので、ゆっくり見てくださいね。
凸レンズの名称と性質
まずは、説明をするために凸レンズの名称をまとめます。
小学生が覚える必要はないので、気楽に見てね!
①光軸(こうじく)
レンズの軸のことで、レンズの中心と焦点を結んだ線です。
②焦点(しょうてん)
凸レンズを通った光が集まる点のことです。
凸レンズの両側に存在します。
③焦点距離(しょうてんきょり)
凸レンズの中心から焦点までの距離のことです。
次は性質を見てみましょう!
光は、実はあらゆる方向に放たれています。
全てを作図することは難しいのですが、凸レンズを通る光の中で3つだけ簡単に作図できる光があります。
①凸レンズの中心を通る光
凸レンズの中心を通る光は、まっすぐ進みます。
②凸レンズの光軸に平行な光
光軸に平行な光は、焦点を通る。
③凸レンズの焦点を通る光
凸レンズの焦点を通る光は、光軸に平行に進みます。
この性質を知っていると、役に立つよ!
焦点の『外側』に物体があると、どうなる?
焦点の外側にろうそくを置いた場合、どうなるか見てみましょう!
①凸レンズの中心を通る光(黄色線)
②凸レンズの光軸に平行な光(赤線)
③凸レンズの焦点を通る光(緑線)
この3本の光を作図してみると、凸レンズを通過した後に一点で交わります。
もしここにスクリーンを置くと、逆さまになったろうそくが映し出されます。
光が実際に集まってできる像のことを、実像(じつぞう)と言います。
【この原理を使った実用品】
プロジェクターやピンホールカメラなどは、この原理が使われているよ!
逆さまになるのが、ちょっと不思議だよね。
【豆知識】
私達の目も、
「瞳が凸レンズ」、「網膜がスクリーン」がスクリーンの役割をしています。
ろうそくを焦点からもっと離して実像を作図してみると、「なぜ遠くに行く程ものが小さく見えるか?」もわかると思います。
工作をしながら見え方を試してみると楽しいですよ!
【工作関連の記事】~理系に強くなろう
焦点の『内側』に物体があると、どうなる?
今度は、ろうそくをレンズに近づけて、焦点の内側においてみます。
焦点を通って凸レンズに向かう光(緑線)は作図できませんので、凸レンズに平行向かう光(赤線)と凸レンズの中心に向かう光(黄色線)を作図します。
2本の線は交差せず、光が1点に集まらないことがわかります。
光が1点に集まらないので、実像はできないのです。
でもここで、不思議なことがおきるよ。
目が錯覚を起こし、あたかも拡大像が見えるんだよ。
どういうことかというと・・・
凸レンズを通った後の光を、それぞれ凸レンズの手前方向に延長させてみます。(上図の点線部。)
すると、延長線は一点で交わりますね。
ここに、あたかも拡大されたろうそくがあるかのように映るのです。
実際にはないのに見える像のことを、虚像(きょぞう)と言います。
まさにこれが、虫眼鏡でものを見ると大きく見える原理なのです。
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なぜスプーンは逆さまに映る?~凹面鏡とは何だろう?
凸レンズの性質を少し理解できたら、いよいよ『なぜスプーンのくぼみに映る顔が逆さまになるのか?』を考えてみましょう!
ここからは高校物理の内容なので、何となくわかる程度でよいと思います。
まず、凹面鏡とは何かを説明します。
凹面鏡とは、形状は球面の一部で、内側が鏡になっているものです。
読み方は『おうめんきょう』と読みます。
スプーンのくぼみは、正確には球面の一部ではないかもしれませんが、この記事では球面の一部と考えて説明していきます。
凹面鏡の焦点とは?
凹面鏡にも、凸レンズと同じように光軸や焦点があるのです。
凹面鏡の名称も簡単に説明しておきます。
ちょっと難しいけど、凸レンズの考え方を応用して考えてみてね!
①光軸
凹面鏡の中心と焦点を通る軸のことです。
②焦点
凹面鏡に対して平行に入ってきた光は、鏡で反射するとある一点に集まります。
この点のことを焦点と言います。
③焦点距離
凹面鏡の中心から焦点までの距離のことです。
凹面鏡に似た構造のものとして、パラボラアンテナがあります。
(※パラボラアンテナは球面の一部ではなく放物面だという違いがあります。)
光軸に平行な電波を反射させ焦点に集めて受信するアンテナなので、凹面鏡に似ていますね。
他にも似たような構造のものがあるか探してみよう!
ソーラークッカーとかね!?
そして、凹面鏡の性質についても見てみましょう!
凸レンズと違うのは、光を反対側に通さないので、中心を通る線が簡単に書けない点です。
(※入射角と反射角が等しいことから、一応作図することは可能です。)
2本の線があれば像を作図ができるので、凹面鏡では次の2本を手がかりに作図していきましょう。
①光軸に平行な光
光軸に平行光は、反射すると焦点を通ります。これが、凹面鏡の特徴ですよね。
②焦点を通る光
①が成り立つということは、その逆も成り立つということです。
つまり、焦点を通る光は、凹面鏡で反射されると光軸に平行な光となります。
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焦点の『外側』だと?~スプーンが逆さまに映る理由!!
さて、凹面鏡でも凸レンズと同じように、焦点の外側に物を置くのと、内側に置くのでは見え方が違うのです。
まずは、普段私達がスプーンのくぼみをのぞくときの状態、つまり焦点の外側にものを置いた場合から見てみましょう!
簡単に作図できる2本の線をえがいてみましょう。
①ろうそくの炎から出た光軸に平行な光(赤線)は、凹面鏡で反射されると焦点を通ります。
②ろうそくの炎から出た焦点を通る光(緑線)は、凹面鏡で反射されると光軸に平行な光になります。
この2本の線を作図してみると、1点で交わりますよね。
1点に光が集まるので、実像が映し出されます。
凸レンズの時と同じように、逆さまになっていますよね。
これが、『なぜスプーンのくぼみに映る顔が逆さまになるのか?』の答えなのです!
凸レンズと時と似ていることに気が付いたかな?
難しいことは、知っている知識とリンクさせて考えると、理解しやすくなるよ!
焦点の『内側』だと?~実は逆さまだけじゃないよ!?
実は、スプーンのくぼみに映るものは全て逆さまに見えるわけではないのです!?
これは、殆どの子供が気が付いていない点だと思います。
なぜなら、顔をスプーンすれすれまで近づけないとならないので、目とスプーンが近すぎて見えないんですよ(笑)。我が子もビックリしていました!?
つまり、ものが焦点の内側にあると、逆さまにならないのです。
そこで、原理の説明と、どのように観察するかという実験のアイデアをご紹介します!
まず、焦点の内側にろうそくを置いた時について考えてみましょう。
①ろうそくの炎から出た光軸に平行な光(赤線)は、凹面鏡で反射されると焦点を通ります。
②焦点を通る光を作図しようとすると・・・。
ろうそくが焦点よりも内側にあるので作図できません。
でも、焦点とろうそくの炎を結んだ線(緑点線)を補助線として作図すると、あたかも焦点を通ってきたかのような光を作図できます(緑線)。
焦点を通ってきた光だと考えてみると、凹面鏡で反射された後は光軸に平行な光になりますよね。
これで2本の反射した光を作図することができました!
でも、この2本の線は1点で交わっていません。
光が1点に集まらないと実像はできないのです。
少し難しいけど、ここまでわかったかな?
そこで、次はこのように考えます。
反射した後の2本の光の線を凹面鏡の裏側に延長させてみます。
そうすると、光の線が1点で交わりますよね。
凹面鏡の内側から見ると、この位置に光が集まってあたかも拡大像があるかのように映るのです。
実際に光が集まってできた像ではないので、これは虚像ですね。
何だか凸レンズ(虫眼鏡)の時と似ていますよね。
凸レンズの時と似ていることに気が付いたかな?
難しいことは、知っている知識とリンクさせて考えると、理解しやすくなるよ!
では、これをどのように観察すればよいか、実験のアイデアのご紹介します!
割りばしの先端を油性マジックで2色に塗ります。
今回は上を赤、下を青に塗ってみました。
この割りばしをスプーンに近づけたり離したりしてみてください!
まず、近づけてみましょう!
割りばしの色を確認すると逆さまになっていないことが確認できますよ!(焦点の内側)
次に徐々に割りばしをスプーンから離していきましょう。
途中で上手く映らない場所が出てくると思います。(焦点付近)
さらに割りばしを離していくと、いつの間にか上下が逆さまになっていることが確認できると思います。(焦点の外側)
余裕があれば試してみよう!~作図や凸面鏡など
もし余裕があれば、スプーンからの距離によって見える像が大きくなったり小さくなったりすることを作図をして確かめることもできます。
更に興味が湧いたら、スプーンを裏返して背の部分を見たらどうなるのか実験してみることもできますよ!
※スプーンの背側について調べる時は、『凸面鏡(とつめんきょう)』について調べてみましょう。
今は理解できなくても、中学生・高校生と進んでいくうちに、「このことだったのか!」とわかる日が来ると思います。
難しく考えずに、暮らしのすぐそばにある『身近な科学』について、遊びながら楽しく実験してみてください!
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